11月9日妥当レンジ 21,900円~23,600円
米物価上昇が顕在化、米金利上昇リスクが高まる

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

 

<米中貿易摩擦の楽観論が霧散>
■米中間選挙は、事前予想通り下院を民主党が、上院を共和党が押さえた。(予想されていたことではあるが)下院で民主党が過半数を制したことから、予算関連法案でのトランプ大統領の足枷が強まり、外交・通商面で一段と強行になるとの見方が強まっている。その結果、米中貿易摩擦に関しては、選挙前にあった緩和ムードが霧散した。9日の米中両国による第2回外交・安全保障対話は、南シナ海、台湾、チベット問題などでの相克が浮き彫りになった。
■7-8日の米FOMCの声明文で「さらなる利上げが正当化される」と言及されたこと、9日発表の米卸売物価指数(10月)において前月比+0.6%と予想(+0.3%)を大幅に上回る上昇を受けて、週明けの株価は下落している。欧州委員会が経済見通しを下方修正したこと(8日)、イタリア財政リスク、メイ首相の離脱方針に反対して英閣僚が辞任したことなど、欧州の不透明感も高まっている。
■今週は、イタリアの欧州委員会への予算再提出期限(13日)であることに加えて、米・消費者物価指数(14日)、米・小売売上高(15日)が発表される。消費者物価の上昇は、長期金利の上昇懸念を強める可能性もある。加えて、14日の中国の10月の経済指標(鉱工業生産・小売売上高・固定資産投資)にも要注意。
■10日の日経新聞によれば、9日までに決算発表を行った(3月決算期企業)1346社の4-9月の純利益は前年同期比+19%であったが、下期は▲15%が予想されている。為替前提が慎重な企業が多く、のり代が多いとの見方はあるものの、来期以降を視野におけば、楽観的な期待は持ち難いと考えるべき。

 

<「コンセンサスDI」 は全期間で50%割れ>
■「IFIS/TIWコンセンサス225」は、3週連続で全期間で前週比マイナス。「コンセンサスDI」(前週比プラス企業とマイナス企業の比率)も、全期間で50%割れだった。(少なくとも)19年3月期の本決算が発表される来年春頃までは、下落と反発を繰り返しながらも、底値を模索する展開が続くとTIWでは考えている。決して上値を追わない姿勢が求められるだろう。

 

 

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

21,900円~23,600 (前回22,000円~23,800円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(11月9日)来期予想ベースEPSをもとに算出

◇IFIS/TIWコンセンサス225(11月9日)

今期予想EPS 1399.43 (前週 1401.73円)
来期予想EPS 1564.19 (前週 1571.89円)
再来期予想EPS 1608.46 (前週 1619.91円)
今期予想PER 15.90 (前週 15.87倍)
来期予想PER 14.22 (前週 14.15倍)
再来期予想PER 13.83 (前週 13.73倍)
来期予想PBR 1.11 (前週 1.11倍)
来期予想ROE 7.77% 前週 7.81%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
7.43% (前週 7.46%)

11月9日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

 



 

図1
妥当レンジは僅かながら下向き傾向。




図2来期予想ベースのプラス企業比率は、 42.053.9%→49.538.344.1
再来期予想ベースのプラス企業比率は、54.9%→52.3%→45.242.443.9
3週連続で50%割れ。下方トレンド続く。

 

[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]

 

 

出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2014年1月から表示

 

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り

 

株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。