10月26日妥当レンジ 21,800円~23,600円
反発局面はあっても限定的、下押し圧力の強い展開続く

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

 

<米7-9月期の実質GDPは市場予想を上回ったが>
■サウジ著名記者カショギ氏殺害に関して、注目されたトルコのエルドアン大統領の演説(23日)は、「計画的な殺害だった」と言明するに留まった。米国は同氏殺害に関わった実行犯に対して米国入国査証の取り消しを行ったが、トルコ(あるいは米国)は本件を対サウジとの交渉材料に用いるとみられ、灰色のまま霧散する可能性も考えられる。
■25日のECB理事会では予定通り年内に量的金融緩和策を終了させることを確認した。しかし、イタリアの財政不安や米中貿易戦争が景気の先行きに対して影響を与えつつある。 10月のユーロ圏製造業PMI(24日)は、52.1と市場予想(53.0)を下回った。欧州委員会はイタリアの予算案を差し戻したが、コンテ首相は修正に応じない構えである。修正を拒めばイタリアは欧州委員会の監視下に置かれることとなる。ドイツ・ヘッセン州の議会選挙(28日)ではメルケル首相が率いるCDUが得票率を大きく落とした。メルケル氏は党首退任を表明した。
■トルコやインドネシアなど新興国の金融政策決定会合ではいずれも利上げが見送られたが、特に混乱は生じなかった。
■米国の7-9月期GDP速報(26日)おいて、実質成長率は4-6月期の+4.2%から+3.5%へと減速したものの市場予想(+3.2%)を上回った。ただし、在庫投資の寄与度が高く、駆け込み需要が生じていたことが推察される。また、ローン金利の上昇から住宅投資は減少、設備投資も減速している。
■今週は、日銀金融政策決定会合(30-31日)、中国製造業PMI(国家統計局31日、財新1日)、米ISM製造業PMI(1日)、米雇用統計(2日)など重要なイベントが続く。特に米雇用統計では時間当り賃金の上昇率に注目が集まりそうだ。

 

<「コンセンサスDI」 は再び全期間50%割れへ>
■「IFIS/TIWコンセンサス225」は、全期間で前週比マイナス。「コンセンサスDI」(前週比プラス企業とマイナス企業の比率)も、再び全期間で50%割れに。2Q決算での期待も萎みつつあり、アナリストの長期見通しも下方修正される可能性が強い。反発局面があっても限定的と思われ、引続き下押し圧力の強い展開が続くと考える。

 

 

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

21,800円~23,600 (前回22,600円~24,500円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(10月26日)来期予想ベースEPSをもとに算出

◇IFIS/TIWコンセンサス225(10月26日)

今期予想EPS 1407.56 (前週 1409.50円)
来期予想EPS 1581.26 (前週 1585.48円)
再来期予想EPS 1626.04 (前週 1631.38円)
今期予想PER 15.05 (前週 15.99倍)
来期予想PER 13.40 (前週 14.21倍)
再来期予想PER 13.03 (前週 13.81倍)
来期予想PBR 1.08 (前週 1.15倍)
来期予想ROE 8.09% 前週 8.10%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
7.79% (前週 7.63%)

10月26日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

 

 



 

図1妥当レンジ下限を大きく下回る状態は、“売られ過ぎ”サインであるが、予想利益が下方トレンドにある中では、大きなリバウンドは期待し難い。



図2
来期予想ベースのプラス企業比率は、 
50.0%→42.442.053.9%→49.5
再来期予想ベースのプラス企業比率は、44.749.454.9%→52.3%→45.2
決算発表1週目、再び全期間で50%割れへ。

[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]

 

図3
2Q
決算において企業業績が上方修正をするという期待は既に剥落。 以前から主張しているのだが、例え2Qまでの業績が好調であっても不透明感の強い環境では企業は慎重なスタンスを取る。

 

 

図4
予想収益が不確実な中では、配当利回り(予想)が唯一の手掛かりか?
2016年の下落時の東証1部の予想配当利回りは2.06%(日経平均は2.03%)。長期金利がマイナスの時だったことを考慮すれば、現時点では2.4%程度の配当利回りが同等か? ここから逆算した日経平均株価の下値水準は概ね18,700円(あくまでもご参考)。

 

出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2014年1月から表示

 

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り

 

株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。