10月12日妥当レンジ 22,600円~24,500円
リスク要因増加、中国経済統計発表(19日)にご用心

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

 

<株価の下落基調続く>
■株価下落が続いている。報道される内容も市場に対してネガティブなものが多い。イタリアの財政問題を巡って長期金利上昇(9日)、イングランド銀行による「無秩序離脱」によって引き起こされるデリバティブ取引の不安定化への警告(日経11日)、9月の中国貿易統計における米国からの輸入減少(12日)、共同声明を採択できなかったG20の機能不全(12日)、サウジアラビアの著名記者の殺害疑惑(12日日経)、ムニューシン米財務長官が為替条項を日本にも適用する考えを表明(13日)、トランプ大統領がサウジへの厳罰の可能性について言及(13日)、ドイツ・バイエルン州議会選挙においてCSU(キリスト教社会同盟)が大幅に票を減らす(14日)、安倍首相が消費税率引上げを予定通り実施する方針であることを言明(15日)。
■欧州に関しては、イタリア(財政に関して欧州委員会と対立する可能性)、英国(無秩序離脱の可能性)に加えて、ドイツのメルケル首相の政権基盤の弱体化という問題も加わった。EU首脳会議(17-18日)、ドイツ・ヘッセン州議会選挙(28日)などにも気を配りたい。さらに、サウジアラビア政府が記者殺害に関与したことが示されれば、原油取引などで混乱が生じる可能性もある。
■今週は、19日発表予定の中国経済指標(7-9月期GDP、9月の鉱工業生産・小売売上高・固定資産投資)を最も警戒したい。ムニューシン財務長官の「為替条項」発言を機に、円高圧力が強まったことも不安材料。日本株はリバウンド局面はあっても上値は重く、既に天井を打った可能性も意識したい。

 

<「IFIS/TIWコンセンサス225」は9週間ぶりに全期間でプラス>
■「IFIS/TIWコンセンサス225」は、8月10日以来、9週間ぶりに全期間でプラス。ただし、ファーストリテイリング(9983)の対象決算期移行による影響が強い。「コンセンサスDI」(前週比プラス企業とマイナス企業の比率)は、今期・来期は50%割れであるが、再来期が7週間ぶりにプラスとなった。企業業績見通しが一段と深刻化しているという様相ではないものの、ボジティブな要素は少ない。

 

 

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

22,600円~24,500 (前回23,400円~25,200円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(10月12日)来期予想ベースEPSをもとに算出

◇IFIS/TIWコンセンサス225(10月12日)

今期予想EPS 1409.74 (前週 1398.53円)
来期予想EPS 1586.15 (前週 1579.20円)
再来期予想EPS 1631.14 (前週 1623.04円)
今期予想PER 16.10 (前週 17.01倍)
来期予想PER 14.31 (前週 15.06倍)
再来期予想PER 13.91 (前週 14.65倍)
来期予想PBR 1.15 (前週 1.21倍)
来期予想ROE 8.04% 前週 8.02%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
7.58% (前週 7.46%)

10月12日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

 

 





図1
まだリバウンド局面はあると考えるが、企業業績見通しの不確実性は強まっている。



図2来期予想ベースのプラス企業比率は、 44.047.750.0%→42.442.2
再来期予想ベースのプラス企業比率は、44.448.444.749.454.8%。
再来期は7週ぶりに50%超だが・・・・。

 

[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]

 

出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2014年1月から表示

 

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り

 

株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。