8月17日妥当レンジ 22,800円~24,700円
米中間選挙までボラタイルな展開が続く

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

 

<米中貿易戦争を市場が強く意識する展開に>
■16日に中国商務省が、商務次官が訪米して事務レベルの協議を行うと発表したことを受けて一時的に大きく株価が反発する局面があったが、米中貿易摩擦と中国経済の失速懸念が株式市場の重石になっている。日経平均株価は比較的に確りしているものの、TOPIXはじり安傾向にあり、小型株では下落が顕著である。3月末と8月17日の指数を比較すると、日経平均株価は3.7%上昇しているが、日経JASDAQ平均は7.1%の下落、東証マザーズ20.5%の下落となっている。
■22日、23日に米中両政府はワシントンで事務レベルの協議を予定しているが、過大な期待は禁物だろう。23日には160億ドル相当の中国製品に対する追加関税の発動が行われる予定であり(中国も米国の発動と同時に報復関税を発動)、追加の2,000億ドルの対中制裁関税も20~23日の産業界への公聴会を終えた後に発動時期が示される可能性が高い。
■中国経済指標の軟化によって、人民元と上海株式市場の下落傾向が顕著になりつつある。11月にも米中両国は首脳会談を模索していると伝えられるが、いずれにしても米中間選挙(11月6日)が終わるまでは、対立構造が解消される可能性は小さいと思われる。
■日本株には割安感があるので、下落は限定的と見ることも出来るが、バリュエーションの高い成長株に関してはダウンサイド・リスクが大きい。米国・欧州の経済は良好であるものの、中国や新興国経済の悪化も懸念される。また、2019年10月予定の消費税率引上げが時間的に迫ってくることも投資家心理を圧迫する。警戒モードはまだ続きそうだ。

 

<コンセンサス予想EPSの増減はソフトバンクの影響が強い>

■「IFIS/TIWコンセンサス225」は、前週比で今期+11.96円、来期▲9.29円、再来期+2.73円と変化が大きいが、ソフトバンクグループ(9984)の影響を除外すると、今期+3.14円、来期▲0.16円、再来期▲1.00円となり、小さな変化に留まる。「コンセンサスDI」(前週比プラス企業とマイナス企業の比率)は、全期間で50%を上回っているが、1Q決算発表が一巡した今週のデータに注目したい。

 

 

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

22,800円~24,700 (前回22,900円~24,800円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(8月17日)来期予想ベースEPSをもとに算出

◇IFIS/TIWコンセンサス225(8月17日)

今期予想EPS 1400.80 (前週 1388.84円)
来期予想EPS 1577.02 (前週 1586.31円)
再来期予想EPS 1638.39 (前週 1635.66円)
今期予想PER 15.90 (前週 16.06倍)
来期予想PER 14.12 (前週 14.06倍)
再来期予想PER 13.59 (前週 13.63倍)
来期予想PBR 1.14 (前週 1.15倍)
来期予想ROE 8.08% 前週 8.19%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
7.68% (前週 7.76%)

8月17日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

 

TIW1

2016年頃から小型株相場が続いてきたが、2018年年初を天井に下落トレンドに入っている。日経平均だけをみているとマーケットは確りしているように見えるが、実態的には下降局面にあると言える。


TIW2来期予想ベースのプラス企業比率は、 47.9%56.0%50.0%58.3%→55.2%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、50.9%44.4%→
58.8%52.0%→55.3%。
60.7%
1Q決算が一巡した今週以降の動きに注目している!

 

[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]

 

出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2014年1月から表示

 

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り

 

株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。