5月2日妥当レンジ 22,950円~24,800円
パッとしなかった米経済指標、企業業績も想定下回るか
【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】
<パッとしなかった米国統計>
■前回、日本のゴールデンウィーク中に発表される米国統計に期待を持ってスタンスを積極化させたが、結果的には空振りに終わった。
■ISM製造業(1日)、ISM非製造業(3日)ともに4月の数値は前月を下回るものであった。4日発表の4月の米雇用統計も非農業部門雇用者数は前月比16.4万人増と市場予想(19.2万人増)を下回った。平均時給も前年同月比+2.6%とやや緩慢な状態であった。一方で、失業率は6ヵ月ぶりに低下し、前月の4.1%から3.9%と2000年12月以来の水準となった。3月の非農業部門雇用者数が10.3万人増から13.5万人増へと上方修正されたことを考慮すれば決して悪い内容ではなかった。
■日本株は連休明け上値の重い展開が続いている。冴えない米国統計に加えて、欧州の経済指標が軟化していること、イランを巡る地政学リスク、等々の外部要因が挙げられるが、最大の理由は予想以上に国内企業の業績見通しが冴えないことにある。コンセンサスEPSは5月2日時点で前週比マイナスとなった。これは円高による企業収益悪化が見込まれた2016年と同じ傾向である。ただし、前向きな投資(コスト増)に対しても市場はネガティブな反応を示す傾向があり、実態以上に市場センチメントがマイナスに振れているようである。
■今週は、日中韓首脳会談(9日)、柳瀬元首相秘書官の参考人招致(10日)、イラン核合意からの離脱に関する判断の発表(9日未明)と神経質なイベントが続くが、イベント経過後には出直ることに期待したい。
<IFIS/TIWコンセンサス225:GW中のマイナスは2016年と同じ>
■5月2日時点のIFIS/TIWコンセンサス225(日経225のコンセンサスEPS)は、全期間でマイナスとなった。ゴールデンウィーク中に前週比マイナスとなるのはアベノミクス相場が始まった2013年以降では2016年以来2回目。
■来期予想(19年度)が大幅に引下げられる可能性があり、上昇ポテンシャルも低くなる可能性が指摘される。しかし、現株価は依然として割安感が強く、下方リスクは限定的と見る。
◇日経平均妥当水準(レンジ)
22,950円~24,800円 | (前回22,950円~24,750円) |
*「IFIS/TIWコンセンサス225」(5月2日)来期予想ベースEPSをもとに算出
◇IFIS/TIWコンセンサス225(5月2日)
今期予想EPS | 1357.88円 | (前週 1361.29円) |
来期予想EPS | 1433.30円 | (前週 1435.86円) |
再来期予想EPS | 1624.88円 | (前週 1627.58円) |
今期予想PER | 16.55倍 | (前週 16.50倍) |
来期予想PER | 15.68倍 | (前週 15.65倍) |
再来期予想PER | 13.83倍 | (前週 13.80倍) |
来期予想PBR | 1.18倍 | (前週 1.18倍) |
来期予想ROE | 7.51% | (前週 7.52%) |
来期予想 インプライド・リスク・プレミアム |
7.13% | (前週 7.13%) |
5月2日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出
企業業績は、従前の想定よりも大きく下回るのか?
特に(新)来年度=19年度が厳しそうな感じ。
来期予想ベースのプラス企業比率は、 51.6%→47.7%→46.0%→68.5%→44.9%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、47.7%→44.6%→51.3%→62.2%→51.7%。
「コンセンサスDI」は再び大きく低下→従前の想定よりも企業業績は厳しいのか?
[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]
出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2014年1月から表示
「IFIS/TIWコンセンサス225」について IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。 理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。 4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。 〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕 会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。 〔予想EPS増減社数〕 今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。 〔予想PBR(今期末)〕 前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。 〔予想ROE(来期ベース)〕 前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。 〔リスクプレミアム〕 特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り |