4月6日妥当レンジ 21,600円~23,350円
習近平主席の演説で貿易摩擦懸念は急低下したが
【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】
<習近平国家主席が対話重視姿勢を示す>
■中国と米国の貿易摩擦を巡る応酬と、他方でそれを打ち消す米高官のコメント等によって、為替と株価が上下に揺れ動く展開が続いている。
■本日(10日)、中国の習近平国家主席が「ボアオ・アジアフォーラム」年次総会において講演し、自由貿易港の検討、金融の開放措置、外資企業の事業範囲拡大、外国企業の知的財産保護、自動車などの輸入関税引き下げなどに言及。それを受けて、日本株はポジティブに反応している。
■米中貿易摩擦は落とし所を探る展開が続くと思われるが、米国が相手国に対して高圧的に交易条件の変更を求める動きは今後も続くものと見られ、引き続き警戒が必要と思われる。15日に米財務省が為替報告書を議会提出予定であること、17~18日の日米首脳会談には要注意。
■新たに浮上した懸念材料としては、シリアが化学兵器を使用した疑い(7日)から再び対シリアの軍事行動が検討されていること、米連邦捜査局(FBI)がトランプ大統領の顧問弁護士の自宅や事務所などを捜索したこと(9日)が挙げられる。
■3月の米雇用統計(6日)は、2月の大幅増の反動や調査週の悪天候の影響などから非農業部門雇用者数は10.3万人増(2月+31.3万人・市場予想18.9万人増)に留まった。ISM製造業・非製造業ともに3月は前月を下回っており、やや踊り場的な状態にある。
<IFIS/TIWコンセンサス225:全期間で前週比マイナスに>
■4月6日時点のIFIS/TIWコンセンサス225(日経225のコンセンサスEPS)は、全期間において前週比マイナスとなった。「コンセンサスDI」(前週比プラスになった企業数の比率)も、来期ベースは50%台を回復したものの、再来期ベースが50%割れとなった。
■日経平均株価は妥当レンジ下限水準にあり、引き続き割安感が強いことから、外部要因によっては浮揚する可能性もあるが、本格的に出直るのは決算発表を経過して(次年度の)業績を織り込んでからと考える。
◇日経平均妥当水準(レンジ)
21,600円~23,350円 | (前回21,600円~23,350円) |
*「IFIS/TIWコンセンサス225」(4月6日)来期予想ベースEPSをもとに算出
◇IFIS/TIWコンセンサス225(4月6日)
今期予想EPS | 1326.46円 | (前週 1327.77円) |
来期予想EPS | 1391.67円 | (前週 1392.46円) |
再来期予想EPS | 1578.78円 | (前週 1579.91円) |
今期予想PER | 16.26倍 | (前週 16.16倍) |
来期予想PER | 15.50倍 | (前週 15.41倍) |
再来期予想PER | 13.66倍 | (前週 13.58倍) |
来期予想PBR | 1.13倍 | (前週 1.13倍) |
来期予想ROE | 7.30% | (前週 7.34%) |
来期予想 インプライド・リスク・プレミアム |
7.01% | (前週 7.04%) |
4月6日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出
引き続き日経平均株価は、妥当レンジ下限付近に位置しており、割安感は依然として強い。ただし、コンセンサス予想の下ブレ懸念が収まると思われる4月下旬~5月上旬までは、上値を積極的に追う局面ではないと考える。
来期予想ベースのプラス企業比率は、 38.3%→46.8%→53.2%→44.8%→51.6%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、42.5%→45.9%→59.1%→51.2%→47.7%。
「コンセンサスDI」は50%を挟んだ動き。
[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]
出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2014年1月から表示
「IFIS/TIWコンセンサス225」について IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。 理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。 4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。 〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕 会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。 〔予想EPS増減社数〕 今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。 〔予想PBR(今期末)〕 前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。 〔予想ROE(来期ベース)〕 前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。 〔リスクプレミアム〕 特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り |