1月12日妥当レンジ 23,050円~24,900円
米利引上げ期待の強まりから円高進行は限定的と考える

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

 

<円高局面は長くは続かないだろう>

■1月9日から為替が円高に振れている。最初の発端は9日に日銀が国債買い入れオペ(公開市場操作)において、超長期債の買入額を減額したことであった。これを日銀の出口戦略と関連付けた思惑が広がった。翌10日はBloombergが「中国政府高官らが米国債の購入を減らすか停止するかを勧告した」と報じたことからドル安が一気に進行した。この報道に関しては翌日(11日)に中国国家外為管理局が「間違った情報源を引用した可能性がある」と声明を発表して直ちに否定された。しかし、同日(11日)に公表されたECB理事会議事要旨(12/14分)において、近い将来の資産買入の終了に備えて、今年の早い段階にフォワード・ガイダンスの見直しの検討を行うことが示唆されていたことから、ユーロ買い・米ドル売りの流れが加速し、対円でもドル安の動きに繋がっている。
■12日に発表された12月の米小売売上高・消費者物価は良好であったことから3月のFOMC(3/20-21)での追加利上げの見通しが強まると同時にドットチャートが上方修正されるとの見方が強まっている。そのため、一方的に円高が進行する可能性は高くないと考える。
■12日発表の中国貿易統計(12月)において輸入が前年同月比+4.5%と市場予想(+13.0%)を大きく下回った。引き締めてきな金融・財政政策と不動産市場の失速から中国の内需が鈍化している可能性が指摘されており、今後の経済指標を注視する必要があるだろう。今週は18日発表予定の中国GDP(10-12月)・小売売上高(12月)・鉱工業生産(12月)が注目される。

< IFIS/TIWコンセンサス225は、プラストレンドを確認!>

■1月12日時点のIFIS/TIWコンセンサス225(日経225のコンセンサスEPS)は全期間において前週比プラスとなった。コンセンサスDI(前週比プラスになった企業数の比率)も60%台を維持しており、来週後半から本格化する3月期決算企業の3Q決算発表への期待が高まっている。
■引き続き強気スタンスを維持する。

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

23,050円~24,900 (前回23,100円~24,950円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(1月12日)来期予想ベースEPSをもとに算出

◇IFIS/TIWコンセンサス225(1月12日)

今期予想EPS 1197.19 (前週 1192.47円)
来期予想EPS 1350.49 (前週 1342.38円)
再来期予想EPS 1527.82 (前週 1515.00円)
今期予想PER 19.76 (前週 19.89倍)
来期予想PER 17.51 (前週 17.97倍)
再来期予想PER 15.48 (前週 15.65倍)
来期予想PBR 1.30 (前週 1.31倍)
来期予想ROE 7.41% 前週 7.40%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
6.83% (前週 6.83%)

1月12日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出





TIW4

妥当レンジ推計モデル上での長期金利上昇の影響は、0.1%に対して約300円。
現状(0.2~0.3%の上昇)は予想EPSの増加トレンドによって影響はかなり相殺されると考えている。


 TIW3

来期予想ベースのプラス企業比率、60.4%→61.9%→50.0%→64.7%→66.7%
再来期予想ベースのプラス企業比率は、53.3%→64.1%→51.6%→61.1%→66.3%
強いプラストレンドを再び確認。

 

 

[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]

出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2014年1月から表示

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り

 

株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。