9月8日妥当レンジ 20,450円~22,100円
悪抜け。地政学リスクは残るが、米FOMCに期待
【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】
<リバウンド後は米FOMCを待つ展開>
■先週は悪材料が重なり、週末の8日にはドル円は、107円台前半まで円高が進み、日本株は大幅下落となった。1)4日:中国当局が仮想通貨発行による資金調達「ICO」(イニシャル・コイン・オファリング)を全面禁止(その後、仮想通貨取引所も閉鎖へ)、2)6日に米債務上限引上げや暫定予算の期限に関して12月までの延長の合意がされたが、他方でFRB12月利上げが困難になるとの見方が広がった、3)7日:ドラギECB総裁の会見では、ユーロ高に対する牽制はあったものの、欧州経済の好調が確認されることで、ドル安が進行、4)9日の北朝鮮の建国記念日を控えて地政学リスクに対して過敏な状況、5)米国では「ハービー」に続いて大型ハリケーン「イルマ」の上陸が予想されていた。
■結果的に北朝鮮は何も行動を起こさず、「イルマ」の直撃は回避されたこと、などから悪抜けとなり、週明けから円安と株式のリバウンドが生じている。既に北朝鮮が核実験を行う前の水準にまで戻していることから買戻しの動きは一巡すると見られるが、債務縮小開始の決定が見込まれる19-20日の米FOMCに向けて堅調な動きを予想する。
■北朝鮮に対する制裁に関して国連決議(12日)は全会一致で採択されたが、米国が中国・ロシアに譲歩する形となった。今後の北朝鮮の反応には注視する必要があるだろう。
■今週の経済指標は、8月の米国消費者物価(14日)、8月の中国小売売上高・鉱工業生産(14日)、8月の米小売売上高(15日)が注目される。
<コンセンサスEPSは堅調にプラス推移>
■9月8日時点のIFIS/TIWコンセンサス225(日経225のコンセンサスEPS)は、全期間で前週比プラス。コンセンサスDI(=予想EPSの前週比プラス比率)も、6週連続で全期間が50(中立水準)を上回って推移している。
■10月2日付で日経平均採用銘柄の入替えが行われる。北越紀州製紙(3865)、明電舎(6508)が除外になり、リクルートHD(6098)、日本郵政(6178)が採用となる。この入れ替えによって日経平均の予想EPSにはプラス効果が見込まれる。
◇日経平均妥当水準(レンジ)
20,450円~22,100円 | (前回20,700円~22,350円) |
*「IFIS/TIWコンセンサス225」(9月8日)来期予想ベースEPSをもとに算出
◇IFIS/TIWコンセンサス225(9月8日)
今期予想EPS | 1163.83円 | (前週 1161.22円) |
来期予想EPS | 1283.30円 | (前週 1281.97円) |
再来期予想EPS | 1424.82円 | (前週 1422.76円) |
今期予想PER | 16.56倍 | (前週 16.96倍) |
来期予想PER | 15.02倍 | (前週 15.36倍) |
再来期予想PER | 13.53倍 | (前週 13.84倍) |
来期予想PBR | 1.16倍 | (前週 1.18倍) |
来期予想ROE | 7.73% | (前週 7.68%) |
来期予想 インプライド・リスク・プレミアム |
7.42% | (前週 7.34%) |
9月8日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出
5月からの妥当レンジ下限を下回る状態の継続は、
1)地政学リスク(北朝鮮)⇒ 円高と株安
⇒ 9月9日に北朝鮮の行動がなかったことから市場は一旦は安堵
2)米国利上げペースが緩慢になるとの市場の見通し⇒円高が強く影響しているものと考えている。
⇒ 債務上限問題は12月に持ち越しとなったが、その結果、12月利上げの可能性は低下か?
来期予想ベースのプラス企業比率は、 57.2%→65.9%→58.2%→54.7%→55.4%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、61.7%→55.2%→59.9%→52.5%→62.5%。
安定的に50%超をキープしており、まだ翳りはない。
[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]
出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2012年1月から表示
「IFIS/TIWコンセンサス225」について IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。 理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。 4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。 〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕 会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。 〔予想EPS増減社数〕 今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。 〔予想PBR(今期末)〕 前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。 〔予想ROE(来期ベース)〕 前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。 〔リスクプレミアム〕 特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り |