7月28日妥当レンジ 20,750円~22,400円
円高進行でも底固い展開、米経済統計で反騰するか?
【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】
<米政治リスクからドル安→日本株弱含みだが>
■26日の米FOMCは、コンセンサスどおりに現状維持を決定。「比較的早期に」バランスシートの縮小に着手することが示された。ただし、マーケットは物価基調が弱いことから、バランスシート縮小が改めて示唆されたことから利上げ予想が後退し、ドル安(円高)が進んでいる。ドル安を助長しているのが、トランプ政権の混迷である。スパイサー報道官の辞任(7/21)に続いて、プリーバス首席補佐官が辞任(事実上の更迭:7/28)、スカラムチ広報部長は起用後10日で解任された。議会共和党は国境税の導入を見送ることを決定(7/27)、上院はオバマケアの一部を廃止する法案を否決した(7/28)。トランプ大統領が掲げる減税や財政政策の実施の可能性が失われつつある中で、米景気の失速懸念の台頭から利上げの可能性が後退しつつある。それが長期金利の低下とドル安を招き、円高トレンドの重石となって日本株の頭を押えている。
■28日に発表された4-6月期の米実質GDP速報値は、個人消費が底堅く、設備投資も伸びて前期比(年率換算)で2.6%増と好調だった(1-3月期は同+1.2%)、今週は7月の米主要統計が発表予定であるが、堅調な内容が確認されれば一時的にもドル安に歯止めがかかり、日本株の上昇という展開も期待できると考える。
■国内経済指標(いずれも7/28発表・6月分)は、家計調査で2人以上世帯の消費支出が実質で前年同月比+2.3%と閏年の影響を除けば1年10ヵ月ぶりに前年同月を上回った。完全失業率は5月の3.1%から2.8%に低下、有効求人倍率は1.51倍(5月1.49倍)と上昇した。商業販売統計も前年同期比+3.8%と好調である。
■3月期決算企業の1Q決算においては、7月31日までで上方修正が下方修正を圧倒的に上回っている。1日の日経では、31日までに決算を発表した528社のうち7割が増益と報じている。株価上昇のマグマが蓄積されつつある状態と考える。
◇日経平均妥当水準(レンジ)
20,750円~22,400円 | (前回20,800円~22,500円) |
*「IFIS/TIWコンセンサス225」(7月28日)来期予想ベースEPSをもとに算出
◇IFIS/TIWコンセンサス225(7月28日)
今期予想EPS | 1144.68円 | (前週 1143.01円) |
来期予想EPS | 1269.51円 | (前週 1265.78円) |
再来期予想EPS | 1369.66円 | (前週 1371.58円) |
今期予想PER | 17.44倍 | (前週 17.58倍) |
来期予想PER | 15.72倍 | (前週 15.88倍) |
再来期予想PER | 14.57倍 | (前週 14.65倍) |
来期予想PBR | 1.22倍 | (前週 1.23倍) |
来期予想ROE | 7.75% | (前週 7.73%) |
来期予想 インプライド・リスク・プレミアム |
7.26% | (前週 7.24%) |
7月28日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出
日経平均株価は、依然として妥当レンジから大きく下方に乖離した水準が続く。
(為替が大きな重石に)
来期予想ベースのプラス企業比率は、 52.3%→50.5%→57.0%→55.4%→56.8%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、51.9%→58.6%→46.6%→54.9%→66.7%。
50%超の水準を安定的に確保
[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]
インプライド・リスク・プレミアム(IRP)は、ユーロ危機時を除けば最高水準に。期待収益率(長期金利+IRP)で見ても2014年以来の水準に。
出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2012年1月から表示
「IFIS/TIWコンセンサス225」について IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。 理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。 4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。 〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕 会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。 〔予想EPS増減社数〕 今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。 〔予想PBR(今期末)〕 前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。 〔予想ROE(来期ベース)〕 前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。 〔リスクプレミアム〕 特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り |