6月30日妥当レンジ 20,600円~22,250円
懸念材料もあるが基本的には割安感から底堅い展開
【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】
<自民党大敗で外国人の動向に変化? >
■先週は、27日にECBのドラギ総裁が「デフレ圧力がインフレに置き換わった」とインフレ脱却を示唆する発言をしたことや、FRBのイエレン議長が講演であらためて利上げとテーパリングに言及したことなどを受けて、米金利上昇・NY株安が生じ、日本株も一時的には2万円割れとなる展開となった。しかし、週末の株価は(日経平均株価を除く)TOPIX・JPX400など主だった株価指数は、前週末を上回って着地した。
■米・欧での緩和脱却が見込まれる中で、日本は依然としてデフレ脱却がままならず、日銀の緩和姿勢は続くと考えられることから円安(ドル高・ユーロ高)という構図が進みそうである。
■30日発表の5月の全国消費者物価指数はコアは前年同月比+0.4%となったもののエネルギー価格上昇の影響を受けたものであり、コアコアでは同0.0%であった。東京都区部の6月中旬速報ではコアコアは同▲0.2%であり、消費回復の弱さが続いている。
■直近の海外統計では、6月の中国製造業PMIは国家統計局発表分(6/30)も財新・マークイット発表分(7/3)も前月を上回った。6月のISM製造業景況指数(7/3)は57.8と前月(54.9)を大きく上回って好調だ。今週は、6日にISM非製造業景況指数・ADP雇用統計、7日に米雇用統計の発表が予定されている。
■2日の東京都議会選挙で自民党が歴史的な大敗をしたことから海外投資家の動向が懸念されるものの、直ちに国政に影響を与えるものではない。7~8日の20カ国・地域(G20)首脳会議での米独の衝突を懸念する向きもあるが、日本株は依然として割安感が強いことから海外市場の影響を受けたとしても底堅く推移すると考える。
■6月30日時点のIFIS/TIWコンセンサス225(日経225のコンセンサスEPS)は、今期及び再来期ベースが前週比プラスであったが来期がマイナスとなった。これはほぼ東芝(6502)の影響。「225コンセンサスDI」(前週比プラスとなった銘柄数の比率)は、来期・再来期ともに50を上回っている。
◇日経平均妥当水準(レンジ)
20,600円~22,250円 | (前回20,700円~22,400円) |
*「IFIS/TIWコンセンサス225」(6月30日)来期予想ベースEPSをもとに算出
◇IFIS/TIWコンセンサス225(6月30日)
今期予想EPS | 1140.26円 | (前週 1137.32円) |
来期予想EPS | 1259.53円 | (前週 1264.49円) |
再来期予想EPS | 1364.13円 | (前週 1361.84円) |
今期予想PER | 17.57倍 | (前週 17.70倍) |
来期予想PER | 15.91倍 | (前週 15.92倍) |
再来期予想PER | 14.69倍 | (前週 14.78倍) |
来期予想PBR | 1.22倍 | (前週 1.22倍) |
来期予想ROE | 7.66% | (前週 7.66%) |
来期予想 インプライド・リスク・プレミアム |
7.18% | (前週 7.19%) |
6月30日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出
日経平均株価は先週一時的に2万円を割れたものの底堅い展開。金利上昇による海外株式市場の影響を受けることも考えられるものの、依然として強い割安感があることから下方硬直性のある状態が続く。
来期予想ベースのプラス企業比率は、 52.0%→53.1%→51.8%→52.3%→50.5%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、50.7%→47.1%→48.1%→51.9%→58.6%。
再来期ベースが大きく回復。金融・不動産・素材などの業種が目立つ
[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]
出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2012年1月から表示
「IFIS/TIWコンセンサス225」について IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。 理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。 4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。 〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕 会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。 〔予想EPS増減社数〕 今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。 〔予想PBR(今期末)〕 前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。 〔予想ROE(来期ベース)〕 前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。 〔リスクプレミアム〕 特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り |