5月26日妥当レンジ 20,250円~21,900円
日本株は割安ながらリスクオンに向かうシナリオが不在

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

 

<米雇用統計は勿論だが、中国PMIに注目>

先週は、英国マンチェスターでの自爆テロ(22日)、インドネシアのジャカルタでの自爆テロ(24日)の発生によって、マーケットは地政学的リスクをあらためて認識させられた。
■24日発表のFOMC議事録(5/2-3分)において、6月のFOMC(6/13-14)での利上げの可能性が示唆されると同時に、資産縮小の具体策について次回会合で検討されることが示された。26日の米実質GDP成長率(1-3月期・2次推計)においては、前期比年率+1.2%と1次推計(+0.7%)から大きく上方修正された。個人消費、住宅投資、設備投資等が上方修正。4-6月期は個人消費や在庫の循環的な拡大を背景に1-3月期の減速を取り戻す拡大が期待されている。
■6日のOPEC総会に合わせて開催された加盟国及び非加盟国の共同閣僚会合において9ヵ月の減産延長が合意されたが、減産幅の拡大には踏み込まなかったため、原油価格は下落した。
■今週は、ISM製造業景況指数・ADP雇用統計(1日)、米雇用統計(2日)の発表が予定されている。既にマーケットでは6月のFOMCでの利上げを織り込んでいるだけに、円安に振れることはあまり期待できない。むしろ中国の製造業PMI(国家統計局31日、財新・マークイット1日発表)に注意が必要かもしれない。好不況の境目となる50に近づいていることに加えて、24日にムーディーズが長期信用格付を「Aa3」→「A1」に格下げしたことの心理的影響も懸念される。

<内需系を中心に押し目を模索する展開か>

■5月26日時点のIFIS/TIWコンセンサス225(日経225のコンセンサスEPS)は、今期及び再来期ベースで前週比マイナスとなった。再来期がマイナスとなるのは7週間ぶり。通信・石油・プラント建設などが弱い。「225コンセンサスDI」(前週比プラスとなった銘柄数の比率)も、再来期が50%を下回った。一時的なものかどうかを見極める必要があろう。引き続き日本株には割安感が強く、下方リスクは限定的と考えるが、ロシアゲート問題、北朝鮮など海外要因に加えて、加計問題等で内政も揺れており、リスクオンに向かうシナリオが描き難い。為替が読み難いだけに内需系中心に押し目買いか。

 

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

20,250円~21,900 (前回20,250円~21,900円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(5月26日)来期予想ベースEPSをもとに算出

◇IFIS/TIWコンセンサス225(5月26日)

今期予想EPS 1138.52 (前週 1140.78円)
来期予想EPS 1255.26 (前週 1255.15円)
再来期予想EPS 1367.30 (前週 1373.85円)
今期予想PER 17.29 (前週 17.17倍)
来期予想PER 15.68 (前週 15.61倍)
再来期予想PER 14.40 (前週 14.26倍)
来期予想PBR 1.19 (前週 1.19倍)
来期予想ROE 7.59% 前週 7.63%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
7.19% (前週 7.23%)

*5月26日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出



TIW-1
依然として妥当レンジ下限を下回る状態であるが、ここからの妥当レンジの上方シフトはあまり期待できない状態。北朝鮮問題などからリスクオンに向かうことは期待薄の一方で、株価水準は割安のため上下に動き難い展開か?

 


TIW-2
来期予想ベースのプラス企業比率は、 64.5%→56.2%→73.5%→56.0%→50.3%
再来期予想ベースのプラス企業比率は、61.9%→52.3%→64.6%→56.8%→47.9%。

再来期ベースが7週ぶりに50%割れ。一時的なものであれば問題ないが・・・・。

[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]

 

 

 

 出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2012年1月から表示

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り

 

株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。