5月12日妥当レンジ 20,550円~22,200円
妥当レンジは急上昇、機会損失に配慮すべき

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

 

<日経平均株価は現状よりも千円以上高くても不思議でない>

■ほぼ決算発表を終え、対象決算期の移行に伴い、コンセンサス予想EPSは大きくプラスとなった。12日現在の日経平均株価の妥当レンジは、20,550~22,200円へと前週からほぼ千円上方にシフトした。
■しかし、株価上昇は抑制されており、インプライド・リスク・プレミアム(IRP)は7.22%と高い水準になっている。同等の水準にまでIRPが上昇したのは、安倍政権が誕生した2013年11月以降では、2016年5月だけである。この時は、米雇用統計が市場予想を下回り、英国の国民投票を控え、日銀のマイナス金利の有効性に疑問が呈されていたタイミングだった。
■現在のリスク要因としては、1)米FBI長官の解任及びロシアへの情報提供疑惑に伴うトランプリスクの再燃、2)北朝鮮のミサイル発射や核実験をほのめかす発言、3)中国の経済指標が弱含んでいること、4)6月の米FOMCでの利上げが見込まれているにもかかわらず為替がやや高止まりしていること、などが挙げられる。目先的には、企業の今期見通しにおいて為替前提105~110円に象徴されるように慎重スタンスにあることが株価の抑制に繋がっているようである。
■リスク要因がどのタイミングで解消に向かうのかは予想し難いものの、既に多くは織り込まれていると考えられるだけに株価下落リスクはかなり限定されると思われる。時間の経過(=アナリスト見解の浸透や1Q決算の発表等)とともに市場心理は改善に向かうものと考える。その際の上昇スピードは速いと思われるだけにポジションを持たないことによる機会損失を考慮すべきだろう。
■4月の米小売売上高(12日発表)は、前月比+0.4%と市場予想(+0.6%)を下回ったことが発表時点ではネガティブに捉えられたが、2,3月合計で+0.5%上方修正されており、実態には市場予想よりも強いと見られている。国内の景気ウォッチャー調査(11日発表)の現状判断指数は5ヵ月ぶりに改善している。今週は目だった経済指標の発表はないが、18日の国内GDP(1-3月期)の一次速報は前期比改善が見込まれている。日米欧ともに経済環境は良好な状態が続くと考えられる。

 
 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

20,550円~22,200 (前回19,600円~21,200円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(5月12日)来期予想ベースEPSをもとに算出

◇IFIS/TIWコンセンサス225(5月12日)

今期予想EPS 1133.24 (前週 1118.31円)
来期予想EPS 1251.19 (前週 1201.27円)
再来期予想EPS 1360.58 (前週 1302.84円)
今期予想PER 17.55 (前週 17.39倍)
来期予想PER 15.89 (前週 16.19倍)
再来期予想PER 14.61 (前週 14.93倍)
来期予想PBR 1.22 (前週 1.21倍)
来期予想ROE 7.67% 前週 7.46%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
7.22% (前週 7.06%)

*5月12日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出



図1
妥当レンジは来期、再来期予想EPSの対象決算期移行に伴う増加を受けて大幅に上昇。為替の円安、リスクオフなどの兆候が実現すれば、日経平均は一気に1,000円高の可能性も。

 


図2
来期予想ベースのプラス企業比率は、 45.5%→57.1%→64.5%→56.2%→73.5%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、52.4%→55.3%→61.9%→52.3%→64.6%。

来期予想ベースのEPSは1,251円と3月末時点の再来期予想ベースの1,271円に迫る。

[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]

図3インプライド・リスク・プレミアムは急上昇中。

 

図4注:日経新聞マーケット総合欄のデータより算出
緩やかな下方トレンドにあった予想ROEは上昇トレンドに
→ バリュエーションの向上 →株価上昇?

 

 

 出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2012年1月から表示

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り

 

株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。