2月17日妥当レンジ 18,700円~20,200円
来年度を視野に置けば日本株の割安感は顕著

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

 

<来週以降の米経済統計発表に期待>

■先週は、イエレンFRB議長の議会証言(14-15日)において、「金融緩和の縮小することは賢明でない」とのタカ派的な発言を受けて為替は一時的にドル高・円安に動きましたが、金正男氏(北朝鮮の第2代最高指導者の長男)の暗殺やフリン米大統領補佐官の辞任(いずれも13日)といったリスクイベントが生じたことなどから再びやや円高気味に推移している。
■3Q決算発表で確認された堅調な企業業績を踏まえれば、日本株の上昇には物足りなさが残るが、切っ掛け待ちの状態と考える。今週は目立った経済指標の発表は無いものの、来週以降に予定されている米経済指標が注目される。ISM製造業景況指数(1日)、 ISM非製造業景況指数(3日)、ADP雇用統計(8日)、雇用統計(10日)。3月の米FOMC(15-16日)での利上げの可能性は極めて低いものの、雇用統計で賃金上昇ペースの回復が確認されれば利上げは早まるとの見方も優勢である。

 

<コンセンサス予想は、引き続き前週比大幅プラス>
■2月17日時点のIFIS/TIWコンセンサス225(日経225のコンセンサスEPS)は、引き続き全期間において前週比で大きくプラスであった。「225コンセンサスDI」(前週比プラスとなった銘柄数の比率)も来期・再来期ベースともに高水準を維持している。3Q決算発表が終了したことからここからの予想EPSの変化は小幅なものと思われるが、プラストレンドが維持される限りは株価に対して強気のスタンスを継続するべきであろう。
■予想EPSの変化に比べて妥当レンジの変化に乏しい理由は、株主資本の増加による。株主資本が増加したことから予想ROEへの低下圧力がかかっている。
■なお、17日時点では、12ヵ月フォワードベースの予想EPSからの日経平均株価の妥当レンジは、19,580~21,200円と、TIWは算出している。

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

18,700円~20,200円 (前回18,700円~20,200円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(2月17日)来期予想ベースEPSをもとに算出

◇IFIS/TIWコンセンサス225(2月17日)

今期予想EPS 1042.19 (前週 1029.87円)
来期予想EPS 1144.56 (前週 1135.06円)
再来期予想EPS 1254.77 (前週 1245.48円)
今期予想PER 18.46 (前週 18.82倍)
来期予想PER 16.81 (前週 17.07倍)
再来期予想PER 15.33 (前週 15.56倍)
来期予想PBR 1.23 (前週 1.24倍)
来期予想ROE 7.31% 前週 7.26%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
6.82% (前週 6.76%)

*2月17 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

 

図1
株主資本の増加→予想ROEの低下から、予想EPSの増加の割にはレンジはやや停滞している。

 


図2
来期予想ベースのプラス企業比率は、 64.4%→64.8%→62.8%→58.7%→62.1%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、72.2%→70.5%→61.5%→67.6%→55.9%。

再来期ベースが低下するものの、来期は60%台に。

 

 

 

[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]

 

 

 

 出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2012年1月から表示

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り

 

株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。