1月20日妥当レンジ 18,800円~20,350円
企業収益堅調から割安感が意識される展開を予想

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

 

<イベント通過、世界的な経済指標の改善を織り込む展開>

■先週は、英国メイ首相によるEU離脱方針演説(17日)、イエレンFRB議長講演(18日)、ECB理事会・ドラギ議長記者会見(19日)、トランプ大統領就任式(20日)などイベントが目白押しだったが、特にサプライズ(波乱)は無かった。しかしながら、トランプ大統領が就任直後にTPPからの離脱に署名し、NAFTAの再交渉を表明したことや、世界的に反トランプを掲げたデモが広がったことなどを受けて、リスクオフで今週のマーケットはスタートした。トランプ大統領は貿易不均衡に関して中国と並んで日本も名指しにしており、特に自動車分野での影響が懸念される状況である。
■昨日(24日)、英最高裁判所はEUへの離脱通知には議会承認が必要との判決を発表。メイ首相は議会での採決を速やかに得る方向に進む。議会においては国民投票の結果を尊重すべしとの意見もあるものの、離脱反対議員も多く、発動計画の変更や先延ばしを余儀なくされる可能性も指摘される。
■今週は、12月の貿易統計(25日)、12月の全国消費者物価指数(27日)の発表が国内では予定されているほか、米GDP速報値(10-12月期)の発表も控えている。
■トランプ大統領の発言によって揺れるマーケット展開はまだ続くと考えられるが、今週末から3月期決算企業の3Q決算発表が本格化する。アナリストコンセンサス予想の上昇に見られるように企業業績の向上が確認できればバリュエーション面の割安感が強く意識されるものと考えられる。自動車関連は買い難い面が残るが、内需関連に加えてグローバル経済の回復期待から商社・海運、素材関係の株価の持ち直しが見込めよう。

 

<コンセンサス予想は全期間プラス>
■1月20日時点のIFIS/TIWコンセンサス225(日経225のコンセンサスEPS)は全期間で前週比プラスであった。「225コンセンサスDI」(前週比プラスとなった銘柄数の比率)は来期ベースで60%台、再来期ベースでは70%台を回復した。バリュエーション面で割安感が顕在化しており、現株価水準は押し目買いの好機と考える。

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

18,800円~20,350円 (前回18,800円~20,300円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(1月20日)来期予想ベースEPSをもとに算出

◇IFIS/TIWコンセンサス225(1月20日)

今期予想EPS 1012.78 (前週 1011.68円)
来期予想EPS 1107.85 (前週 1104.03円)
再来期予想EPS 1216.16 (前週 1213.03円)
今期予想PER 18.90 (前週 19.06倍)
来期予想PER 17.27 (前週 17.47倍)
再来期予想PER 15.74 (前週 15.90倍)
来期予想PBR 1.29 (前週 1.29倍)
来期予想ROE 7.44% 前週 7.36%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
6.89% (前週 6.82%)

*1月20 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

 

図1
日経平均株価がやや調整する中でも妥当レンジは切りあがっている。 割安感が強まりつつある。

 


図2
来期予想ベースのプラス企業比率は、 72.7%→65.5%→73.8%→57.5%→64.4%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、68.2%→69.8%→73.5%→65.7%→72.2%。

来期ベースは60%台に、再来期ベースは70%台に回復。

 

[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]

 

図312ヵ月フォワード予想の予想EPS2015年水準に戻りつつある中で、予想PERは低下傾向にある。

 

 図4インプライド・リスクプレミアムは7.0%に近づく(1/20現在:6.89%)

 

 

 出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2012年1月から表示

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り

 

株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。