12月2日妥当レンジ 17,950円~19,400円
上昇トレンドは一段と加速、押し目待ちは待ち惚けか?
【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】
<リスクイベントを通過し、一段と上昇基調強まる>
■OPEC総会(30日)での土壇場での減産合意、11月の米雇用統計(2日)での失業率の4.6%への低下など市場にとって追い風が増している。議会制度改革を目指したイタリアの国民投票(4日)は否決に終わり、レンツィ首相は辞任を表明したが、事前に予想されていたことや、今回の国民投票の結果が即ポピュリズム政党の台頭や反ユーロに結びつかないとの見解から、動揺は瞬間的なものに留まった。
■国内企業業績見通しも、円安基調を背景に来期のコンセンサス予想が大きく上昇しており、その結果、株価が上昇したにもかかわらず、割高感は大きく減衰されている。市場の視線が来年度企業業績に向かうことによって、割安感が強まり、もう1~2段の上昇が見込めると考える。12ヵ月フォワード予想EPSを前提としたTIWの日経平均株価の妥当レンジは、18,530円~20,070円である。
■押し目が無い状況が続いている。8日のECB理事会では政策変更は見込まれておらずサプライズは起こりそうもない。13-14日の米FOMCでは高い確度での利上げが見込まれており、その前後で一旦材料出尽しから調整する可能性も考えられるが、前述したように来期企業業績を視野に置くならば株価水準には割高感は無く、押し目を期待する戦略はあまり有効ではないと考える。
<コンセンサス予想は幅広い銘柄でプラスに>
■12月2日時点のIFIS/TIWコンセンサス225(日経225のコンセンサスEPS)は全期間において前週比プラスとなった。特に来期予想ベースは+7.52円と大幅であるが、特定少数銘柄の寄与ではなく幅広い銘柄でプラスであった。前週比プラスとなった銘柄数の比率(今後は、「225コンセンサスDI」と呼称する)は、全期間で50%を上回り、特に来期予想ベースでは62.1%と高水準であった。
■予想PER(12ヵ月フォワード)は年初来の高水準となっているが、コンセンサス予想EPSの上昇が継続する状況においては決して高すぎることはないと考える。
◇日経平均妥当水準(レンジ)
17,950円~19,400円 | (前回17,600円~19,000円) |
*「IFIS/TIWコンセンサス225」(12月2日)来期予想ベースEPSをもとに算出
◇IFIS/TIWコンセンサス225(12月2日)
今期予想EPS | 1005.14円 | (前週 1004.85円) |
来期予想EPS | 1081.34円 | (前週 1073.82円) |
再来期予想EPS | 1183.42円 | (前週 1179.13円) |
今期予想PER | 18.33倍 | (前週 18.29倍) |
来期予想PER | 17.04倍 | (前週 17.12倍) |
再来期予想PER | 15.57倍 | (前週 15.59倍) |
来期予想PBR | 1.24倍 | (前週 1.22倍) |
来期予想ROE | 7.27% | (前週 7.13%) |
来期予想 インプライド・リスク・プレミアム |
6.82% | (前週 6.71%) |
*12月2 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出
妥当レンジの上方シフトが続く。コンセンサス予想EPSの上方シフトも大きな押上げ要因。
来期予想ベースのプラス企業比率は、 45.9%→46.3%→56.5%→50.8%→62.1%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、40.0%→47.4%→53.3%→48.4%→58.2%。
来期予想ベースは60%超に急上昇
[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]
予想PER(12ヵ月フォワードEPSによる)は年初来で最高水準であるが、予想EPSが増加トレンドにあり、神経質になる必要は無いと考える。
出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2012年1月から表示
「IFIS/TIWコンセンサス225」について IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。 理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。 4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。 〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕 会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。 〔予想EPS増減社数〕 今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。 〔予想PBR(今期末)〕 前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。 〔予想ROE(来期ベース)〕 前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。 〔リスクプレミアム〕 特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り |