9月2日妥当レンジ 16,650円~18,000円
米利上げ・日銀緩和期待から日経平均17,000円回復

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

 

<8月の米雇用統計は市場予想を下回ったが>
■2日発表の米雇用統計(8月)は、非農業部門雇用者数は前月比15.1万人増と市場予想(18万人増)を下回った。ただし、3ヵ月平均では23.2万人増と堅調な拡大を維持している。7月よりはやや鈍化したものの、平均時給は前月比+0.1%と上昇した。
■発表直後は非農業部門雇用者数が予想を下回ったことに対して市場には戸惑いがあったものの、為替は円安に動いている。5日には一時的に104円台/ドルをつけた(ただし、5日の黒田総裁の講演で具体的な追加緩和のイメージが得られなかったとして、講演後はドル売りとなった)。
■20-21日の日米の中央銀行の政策決定会合を控えて、米利上げ・日銀追加緩和の材料あるいは反対材料探しが続くと思われる。ポイントになるイベントとしては、6日:米ISM非製造業景況指数、7日:米ベージュブック(地区連銀経済報告)、8日:ECB理事会、15日:米小売売上高(8月)など。次回のECB理事会では、現状維持がコンセンサスであるが追加緩和があれば、日銀のアクションへの期待が高まると考える。
■米利上げ・日銀緩和期待の思惑から月央までは日本株は強含みで推移すると考える。

<来期ベースのコンセンサス予想EPSは実質プラス>
■9月2日時点のIFIS/TIWコンセンサス225(日経225のコンセンサスEPS)は、全期間でマイナスとなったが、銘柄入替(ユニーHD→ユニー・ファミリーマートHD)の影響があった(今期▲9.11円、来期▲9.31円、再来期▲10.20円)。実質では今期▲0.67円、来期+1.10円、再来期▲0.37円であった。前週比プラスとなった銘柄の比率は、前週とは一転して全期間で50%を下回ったが、(円高一服という前提では)一進一退の均衡状態にあると考える。
■予想EPSが減少したにもかかわらず、妥当レンジが上昇したのは採用銘柄入替に起因する予想ROEの上昇が大きい。結果的に、日経平均株価にはまだ割安感が強い。

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

16,650円~18,000円 (前回16,150円~17,500円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(9月2日)来期予想ベースEPSをもとに算出

◇IFIS/TIWコンセンサス225(9月2日)

今期予想EPS 985.98 (前週 995.76円)
来期予想EPS 1064.57 (前週 1072.78円)
再来期予想EPS 1171.62 (前週 1182.19円)
今期予想PER 17.17 (前週 16.43倍)
来期予想PER 15.90 (前週 15.25倍)
再来期予想PER 14.45 (前週 13.84倍)
来期予想PBR 1.14 (前週 1.08倍)
来期予想ROE 7.14% 前週 7.07%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
6.91% (前週 6.99%)

*9月2 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

 

 

TIW1
円高トレンドが一服すれば、日本株の割安感が認識されるだろう。

 

TIW2
来期予想ベースのプラス企業比率は、 48.0%→46.5%→42.1%→54.7%→48.8%
再来期予想ベースのプラス企業比率は、53.4%→51.2%→48.0%→52.6%→45.0%。

再び50%割れ。一進一退の展開か。

[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]

 

 出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2012年1月から表示

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り

 

株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。