8月26日妥当レンジ 16,150円~17,500円
再び「中銀プレイ」の様相を帯びるか?

2016/08/30

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

 

<米利上げ・日銀緩和を視野に思惑が蠢く>
■26日のイエレン議長講演(ジャクソンホール)は、「米雇用が改善し、追加利上げの条件は整ってきた」と利上げに対してやや強含みであった(実際には、フィッシャーFRB副議長がインタビューで、9月利上げ実施および年内複数回の利上げを示唆したことが、為替や長期金利にインパクトを齎した)。
■今週は、31日:ADP雇用統計、1日:ISM製造業景況指数、2日:米雇用統計、と米国統計の発表が続く。現状では米雇用統計(8月)は、非農業部門雇用者数18万人増がコンセンサスであるが、これをやや下回っても利上げムードは維持されると考える。
■9月の中央銀行の政策決定会合は、ECB:8日、米FOMC:20-21日、日銀:20-21日の予定である。9月の米利上げ、日銀追加緩和の可能性はそれほどは高くないと考えるが、マーケットは思惑的に動く可能性も十分考えられる。雇用統計をはじめとした米国経済指標が良好であれば、金融政策決定会合まで短期的には円安・日本株高のトレンドが生じると考える(その場合は、深追いせずに水準を見極めることが肝要)。
■国内経済指標では、7月の家計調査では実質所得は前年同月比▲0.5%であったが、市場予想▲1.0%は上回った。7月の完全失業率は3.0%と1995年5月以来の低水準にあり、労働市場の逼迫から緩やかな改善傾向を辿ると考える。

<来期ベースの前週比プラス企業比率は、15週ぶりに50%超>
■8月26日時点のIFIS/TIWコンセンサス225(日経225のコンセンサスEPS)は、今期及び再来期ベースがマイナスとなったが、来期ベースがプラス。前週比プラスとなった銘柄の比率は、全期間で50%以上となった。特に、来期ベースが15週ぶりにプラス。これは5月の対象決算期の移行を控除して考えれば、実質的には昨年末以来となる。
■株価水準は、月曜日に大きく上昇したものの依然として妥当レンジの中位よりもやや下の水準にあり、米雇用統計の内容によってはさらに上昇が期待できる。(米雇用統計が)やや期待外れであっても日銀の追加緩和期待が残ると考えられるだけに押し目は拾ってゆきたい。

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

16,150円~17,500円 (前回16,250円~17,550円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(8月26日)来期予想ベースEPSをもとに算出

◇IFIS/TIWコンセンサス225(8月26日)

今期予想EPS 995.76 (前週 996.64円)
来期予想EPS 1072.78 (前週 1071.01円)
再来期予想EPS 1182.19 (前週 1182.76円)
今期予想PER 16.43 (前週 16.60倍)
来期予想PER 15.25 (前週 15.45倍)
再来期予想PER 13.84 (前週 13.99倍)
来期予想PBR 1.08 (前週 1.09倍)
来期予想ROE 7.07% 前週 7.05%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
6.99% (前週 6.96%)

*8月26 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

 

 

図1円高トレンドが一服することによって、コンセンサス予想EPSのマイナストレンドも収まり、マーケットの割安感が意識されると考える。

 

図2来期予想ベースのプラス企業比率は、 43.2%→48.0%→46.5%→42.1%→54.7%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、47.3%→53.4%→51.2%→48.0%→52.6%。

来期ベースは15週ぶりに50%超え。円高トレンドの一服から底打ちか?!

[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]

 

 

 

 

出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2012年1月から表示

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り

 

株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
TIWマガジン「投資の眼」   株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。

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