8月5日妥当レンジ 16,200円~17,500円
下方リスクは減少しており、上値を期待するタイミング
【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】
<7月の米雇用統計からセンチメントは大幅改善>
■従前から1Q決算発表が株価のボトム圏で、発表後には悪抜けから底打ちするとの考えを述べてきたが、足もとの株価展開は予想通りになってきた。
■5日発表の米雇用統計(7月)は、非農業部門雇用者数が25.5万人増と市場予想(18万人)を大きく上回った。5月、6月も上方修正された。失業率は4.9%と改善が見られなかったが、時間当たり賃金も前年比+2.6%と堅調である。年内利上げの見通しが強まると同時に、日銀政策決定会合(29日)以降に急速に進んだ円高も一服している。
■国内経済指標も景気動向指数(6月・5日発表)も一致、先行ともに前月比改善、景気ウォッチャー調査(7月・8日発表)も3ヵ月ぶりに前月比プラスとなった。1Q決算発表は峠を超えたが、事前の懸念ほどには悪くなく、予想EPSの低下トレンドも底打ちが近そうである。また、現行の為替水準が織り込まれ悪抜けすることから投資家センチメントの改善が見込まれる。当面は割安感から日本株マーケットの上昇を見込む。(ただし、7月の米雇用統計においては民間部門が季節調整によって大幅に嵩上げされているとの指摘もあり、8月分の発表(9/2)を前に警戒的な動きが出てくることも考えられる)
<コンセンサス予想EPSの低下トレンドはほぼ終息>
■8月5日時点のIFIS/TIWコンセンサス225(日経225のコンセンサスEPS)は、3週続けて前週比で全期間プラスとなった。ただし、8月1日の銘柄入替(シャープを除外、ヤマハ発動機を採用)の影響から今期+4.16円、来期+3.89円、再来期+4.51円嵩上げされており、今期・来期については実質的にはマイナス。しかし、前週比プラスとなった銘柄の比率は来期48.0%、再来期53.4%と大きく改善しており、(現状の為替水準を織り込み)下方トレンドはほぼ終息したと考える。
◇日経平均妥当水準(レンジ)
16,200円~17,500円 | (前回16,400円~17,700円) |
*「IFIS/TIWコンセンサス225」(8月5日)来期予想ベースEPSをもとに算出
◇IFIS/TIWコンセンサス225(8月5日)
今期予想EPS | 993.76円 | (前週 993.37円) |
来期予想EPS | 1081.92円 | (前週 1080.74円) |
再来期予想EPS | 1191.36円 | (前週 1184.81円) |
今期予想PER | 16.36倍 | (前週 16.68倍) |
来期予想PER | 15.02倍 | (前週 15.33倍) |
再来期予想PER | 13.64倍 | (前週 13.98倍) |
来期予想PBR | 1.07倍 | (前週 1.09倍) |
来期予想ROE | 7.12% | (前週 7.10%) |
来期予想 インプライド・リスク・プレミアム |
7.08% | (前週 7.12%) |
*8月5 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出
来期予想ベースのプラス企業比率は、 23.0%→38.0%→33.3%→43.2%→48.0%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、32.6%→32.7%→31.4%→47.3%→53.4%。
再来期ベースで6週ぶりに50%台を回復。今以上の円高進行がなければ業績見通しは底打ち。
[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]
3市場の配当利回りが近接 ⇒ 底値の兆候、1部市場が相対的に割安?
出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2012年1月から表示
「IFIS/TIWコンセンサス225」について IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。 理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。 4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。 〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕 会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。 〔予想EPS増減社数〕 今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。 〔予想PBR(今期末)〕 前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。 〔予想ROE(来期ベース)〕 前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。 〔リスクプレミアム〕 特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り |