7月29日妥当レンジ 16,400円~17,700円
「総括的な検証」の解釈で揺れる

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

 

<先週のイベントは予想の範囲であったが>
■米FOMC(27-28日)と日銀政策決定会合(28-29日)というイベントを通過した。FOMCでは予想通り政策変更はなかったが、会合後の声明で「景気見通しへの短期的なリスクは弱まってきた」と加筆され、年内利上げの可能性に含みを残した。
■日銀金融政策決定会合では、ETFの買入枠が年間3兆3,000億円から6兆円へと拡大された。国債買入額を含めて政策協調による追加緩和実施への期待も強かったため市場の期待には届かなかったが、予想の範囲であった。しかし、会合後の黒田総裁の記者会見において、9月の会合(9/20-21)において「大規模緩和の政策的効果に対する総括的な検証」を行うとの発言があり、「追加緩和」を示唆した発言との見方がある一方で「軌道修正」が行われる可能性も指摘されている。債券市場では国債利回りが上昇するとともに、円高/ドル安に為替が振れ、株式市場は停滞している。
■29日に発表された米国の第2四半期(4-6月)GDP速報値が市場予想の前期比+2.5%を下回る+1.2%に留まったことや、1日発表のISM製造業景況感指数が3ヵ月ぶりに低下したこと(6月53.2→7月52.6)なども為替や株価にマイナスに影響した。
■今週は、3日:ISM非製造業景況感指数、ADP雇用統計、5日:米雇用統計(いずれも7月分)の発表が行われるが、市場予想を下回る数値が続くようであれば目先は円高・株安に動く可能性には注意したい。
■1Q決算発表が進んでいるが、事前の警戒感と比較すればほぼ順調に推移している。決算発表が進む今週から来週にかけて市場心理は底打ちして好転に向かうと予想する。

<コンセンサス予想EPSの低下トレンドの終息は近いか?>
■7月29日時点のIFIS/TIWコンセンサス225(日経225のコンセンサスEPS)は、2週続けて前週比で全期間プラスとなった。ただし、前週同様にプラスとなったのはソフトバンクグループ(9984)など一部銘柄の影響が大きい。しかしながら、前週比プラスとなった銘柄の比率は40%台に回復しており、(100円を割り込む円高が生じない限り)悪抜けが近いことを示唆しているようにも見える。

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

16,400円~17,700円 (前回16,200円~17,500円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(7月29日)来期予想ベースEPSをもとに算出

◇IFIS/TIWコンセンサス225(7月29日)

今期予想EPS 993.37 (前週 987.09円)
来期予想EPS 1080.74 (前週 1073.93円)
再来期予想EPS 1184.81 (前週 1172.72円)
今期予想PER 16.68 (前週 16.84倍)
来期予想PER 15.33 (前週 15.48倍)
再来期予想PER 13.98 (前週 14.18倍)
来期予想PBR 1.09 (前週 1.08倍)
来期予想ROE 7.10% 前週 6.97%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
7.12% (前週 7.04%)

*7月29 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

 

 

図11Q決算を織り込みつつあり、反転の時期は近い!?

 

図2来期予想ベースのプラス企業比率は、 35.8%→23.0%→38.0%→33.3%→43.2%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、35.6%→32.6%→32.7%→31.4%→47.3%。

5週ぶりに40%台を回復。

[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]

 

 

 

出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2012年1月から表示

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り

 

株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。