7月8日妥当レンジ 15,150円~16,350円
1Q決算を通過するまでは、16,500円が上限と考える

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

 

<参院選の与党大勝から楽観ムードに>
■週明けの東京株式市場は大きく反発した。1)8日に発表された6月の米雇用統計が市場予想を大幅に上回り、NY株式市場が13ヵ月ぶりの高値を付けたこと、2)参議院選挙で与党が大勝し、10兆円を超える大型経済対策が見込まれていること、3)先週はイタリアの銀行不振や英不動産ファンドの解約停止が相次いだことなどブレグジットに対する不安から株式市場は売られ過ぎの状態にあったこと、などが要因として挙げられる。
■米雇用統計(6月)は、非農業部門雇用者数の増加が、28.7万人増と市場予想(17.5万人)を大幅に上回った。5月は1.1万人増に下方修正されたが、4-6月の平均では14.7万人と順調に推移している。失業率は4.9%と0.2ポイント悪化したが、労働参加率の上昇による。平均時給も前年比+2.6%と堅調である。ISM製造業・非製造業も市場予想を上回る強い数値であり、米経済は安定的であることが裏付けられた。しかしながら、ブレグジットをはじめ世界経済の動揺を慎重に見極めるために、FRBは利上げには慎重な姿勢を堅持すると考えられ、当面は日本円は強含みで推移すると予想される。

<コンセンサス予想EPSは悪化傾向が顕著>
■7月8日時点のIFIS/TIWコンセンサス225(日経225のコンセンサスEPS)は、全期間でマイナスとなった。輸出セクターが全面的にマイナスとなっている(プラスは、食品、医薬品、金融、電力など)。前週比較でプラスになった企業の比率は来期ベースで23.0%と過去最低の水準。1Q決算を通過するまでは下方トレンドが続きそうだ。
■英首相は、党首選からのレッドソム氏の撤退によって、13日にもメイ内相が就任する見込み。それによってブレグジットへの警戒が再び強まる可能性も考えられる。企業業績見通しの下方修正の織り込みが進むことを考えると、目先の反騰相場の深追いは避けたいところ。1Q決算を織り込むまでは、日経平均16,500円(12ヵ月フォワードの予想PER16.5倍)を上限と考える。

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

15,150円~16,350円 (前回15,650円~16,950円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(7月8日)来期予想ベースEPSをもとに算出

◇IFIS/TIWコンセンサス225(7月8日)

今期予想EPS 986.66 (前週 994.61円)
来期予想EPS 1070.51 (前週 1079.72円)
再来期予想EPS 1173.98 (前週 1189.37円)
今期予想PER 15.31 (前週 15.77倍)
来期予想PER 14.11 (前週 14.52倍)
再来期予想PER 12.87 (前週 13.19倍)
来期予想PBR 0.98 (前週 1.02倍)
来期予想ROE 6.97% 前週 7.03%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
7.29% (前週 7.25%)

*7月8 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

 

 

図111日に大きく反発。売られ過ぎと米経済への信任回復、経済対策への期待、による。
為替次第であるが、1Q決算で円高を織り込む時間が必要。

 

 

図2来期予想ベースのプラス企業比率は、 45.1%→38.7%→48.5%→35.8%→23.0%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、49.7%→47.5%→56.7%→35.6%→32.6%。

来期ベースは過去最低の23%。1Q決算を通過するまでは見通し悪化が続く。

[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]

 

図3コンセンサス予想EPSは、低下トレンド続く。

 

図4先週末時点の予想EPS12ヵ月フォワード)は、999.56円。PER16倍で16,000円。16.5倍で16,500円(ここらが上限か?)

 

 

出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2012年1月から表示

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り

 

株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。