2月12日妥当レンジ 15,200円~16,400円
ボラティリティは低下するものの、上値は重い展開
【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】
<今後は米国経済指標が最重要>
■未曾有の暴落から市場は落ち着きを取り戻しつつあるものの、上値の重い展開が続くであろう。2月第1週の暴落は、1)日銀のマイナス金利採用に関する不透明感と銀行収益の悪化懸念、2)ドイツ銀行のCoCo債の利払停止懸念がマイナス金利への疑念から増幅され欧州での信用リスク不安を引き起こした、3)原油安等による資源国ならびに関連産業への不安、4)米国経済のリセッションの可能性への指摘、などが要因と考えられる。
■この中で最も日本株への影響が強いのが米国経済である。経済環境の悪化から米利上げペースが緩慢になることは円高要因であると同時に、世界的な通貨引き下げ競争に突入するとの疑念である。しかし、米ISM製造業指数の悪化は、原油(シェール)関連の産業で殆ど説明がつく、米国企業の収益悪化は(米国企業はグローバル化が進んでおり)米国以外の地域の経済環境の悪化とドル高による会計上の換算によるものであり、内需を中心とした非製造業は堅調であるという見方も強い。筆者も基本的にはこの見方に賛同する。いずれにしても今後発表される米国経済指標がマーケットを動かす最大要因であり、今まで以上に注視する必要があるだろう。
■3月は、ECB理事会(3/10)、日銀政策決定会合(3/14~15)、米FOMC(3/16)といった日米欧の中央銀行の会合に注目が集まるだろう。欧州は引き続き緩和策を強化すると見られる中で、市場参加者の思惑等から再びボラティリティが上昇する可能性が強いことには留意すべきである。
<業績見通しは円高を緩やかの織り込む展開>
■2月12日時点のIFIS/TIWコンセンサス225(日経225のコンセンサスEPS)は、来期予想ベースがプラスとなった。しかし、これはソフトバンクグループ(9984)、TDK(6762)などウエイトの高い銘柄の影響が強い。前週比で予想EPSがプラスになった銘柄の比率は、来期・再来期ともに40%台前半に低迷している。これから現在の為替水準を織り込む展開が予想されることからマイナストレンドはまだ暫く続くものと思われる。引き続き、は配当利回り重視の保守的なスタンスを堅持すべきと考える。
◇日経平均妥当水準(レンジ)
15,200円~16,400円 | (前回16,800円~18,150円) |
*「IFIS/TIWコンセンサス225」(2月12日)来期予想ベースEPSをもとに算出
◇IFIS/TIWコンセンサス225(2月12日)
今期予想EPS | 987.63円 | (前週 988.15円) |
来期予想EPS | 1115.04円 | (前週 1110.56円) |
再来期予想EPS | 1211.57円 | (前週 1212.57円) |
今期予想PER | 15.14倍 | (前週 17.02倍) |
来期予想PER | 13.41倍 | (前週 15.15倍) |
再来期予想PER | 12.34倍 | (前週 13.87倍) |
来期予想PBR | 0.95倍 | (前週 1.09倍) |
来期予想ROE | 7.06% | (前週 7.19%) |
来期予想 インプライド・リスク・プレミアム |
7.10% | (前週 6.99%) |
*2月12 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出
来期予想ベースのプラス企業比率は、 31.9%→44.4%→38.2%→44.7%→40.3%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、35.2%→47.9%→36.8%→42.9%→40.0%。
為替変動に伴う見通し変更が今後も続くことが予想される
[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]
出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2012年1月から表示
「IFIS/TIWコンセンサス225」について IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。 理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。 4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。 〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕 会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。 〔予想EPS増減社数〕 今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。 〔予想PBR(今期末)〕 前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。 〔予想ROE(来期ベース)〕 前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。 〔リスクプレミアム〕 特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り |