12月30日妥当レンジ 17,950円~19,350円
地政学的リスクの高まりからリスクオフに!

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

<中東情勢はさらに混迷化>
■サウジアラビアがシーア派の有力指導者ニムル師を政治犯として処刑したことを発端として、中東情勢はさらに混迷に拍車をかけている。イランの民衆によるサウジアラビア大使館襲撃(3日)から、サウジアラビアはイランとの断交を発表。4日には、バーレーン、スーダンもイランと断交を発表した。アラブ首長国連邦(UAE)も外交関係を格下げした。中東情勢はシリアをサウジ・イラン両国の代理戦争の舞台とする中で、スンニ派に近いISIS(イスラム国)が勢力を広げており、米国・ロシア・EUが複雑に絡み合っている。
■年明け(4日)の東京株式市場は、昨年末の米国市場の下落、4日発表の中国PMIの悪化と中国株式市場の暴落、さらに地政学的リスク増大による円高によって大幅に下落した。4日のNY市場でもこの流れを引き継いでおり、短期的には投資家のリスク回避行動から調整が続くものと思われる。
■4日発表の米ISM製造業指数(12月)が11月の48.6から48.2に低下したこと(市場予想:49.0)、12月第4週の米週間新規失業保険申請件数(12月31日発表)が前週比2万件増の28.7万件となったこと(市場予想:27万件)、など米国経済の足踏み感が強く、8日発表の米雇用統計までは模様眺めの展開が続くと考えられる。そのため、下落に対する反発は限定的に留まる可能性も考えられることから、慎重な対応が求められよう。
■国内企業業績については足もとの見通しはやや弱含んでおり、来期予想も1桁台の成長に留まると見込まれていることから、3Q決算を控えて積極的な買いは生じにくいと考える。

 

<今期予想の下方トレンドに注意>
■12月30日時点のIFIS/TIWコンセンサス225(日経225のコンセンサスEPS)は、今期・来期ベースはマイナス、再来期ベースはプラスであった。今回は年末で変動サンプル数が少ないことからあまり参考にはならないが、プラス銘柄の業種としては自動車、電力・ガスが挙げられる。ファーストリテイリング(9983)、ファナック(6954)、コマツ(6301)など中国関連銘柄に弱含みのものが目立った。

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

17,950円~19,350円 (前回17,750円~19,150円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(12月30日)来期予想ベースEPSをもとに算出

◇IFIS/TIWコンセンサス225(12月30日)

今期予想EPS 1014.29 (前週 1015.08円)
来期予想EPS 1129.01 (前週 1129.28円)
再来期予想EPS 1232.65 (前週 1232.13円)
今期予想PER 18.77 (前週 18.49倍)
来期予想PER 16.86 (前週 16.62倍)
再来期予想PER 15.44 (前週 15.23倍)
来期予想PBR 1.23 (前週 1.21倍)
来期予想ROE 7.30% 前週 7.29%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
6.62% (前週 6.63%)

*12月30 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

 

図1短期的には18,000円を割れる可能性も想定すべき。

 

図2来期予想ベースのプラス企業比率は、 49.7%→47.4%→43.7%→51.2%→51.9%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、41.1%→57.3%→39.8%→48.8%→49.0%。

今回はサンプル数が少ないためあまり参考にはならない

[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]

 

図3今期予想コンセンサスEPSの低下トレンド続く(既に期初=5月時点を下回る)。

 


図4配当利回りが株価を下支えるか??

 

 

出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2012年1月から表示

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り

 

株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。