12月11日妥当レンジ 17,850円~19,200円
緩和的市場からの構造変化の始まり?

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

<原油価格下落は切っ掛け>
■原油価格が35ドル台/バーレルへの下落に端を発し、世界的に急激なリスクオフが生じている。背景にあるのは金融緩和期待によって膨張していたマネーの収縮である。3日のECBの追加緩和への失望がある一方で、これ以上の量的緩和は必要ないとの見方も強く存在する。15-16日の米FOMCにおいて利上げが決定されることによって、緩和的市場からの巻き戻しによりボラタイルな状況が暫くは続きそうである。
■日本株の下落は、これまでも指摘していた通り、来期・再来期の予想EPSが低下する中で、バリュエーション面での割高感があったことが大きな要素である。軽減税率の自公合意によって17年4月の消費税率10%への引上げが具体化したことも景気に対する不安感を強めているものと考えられる。FOMC直後の(今後の利上げペースに関する)ガイダンス次第では、もう一段の調整も考えられるが、当面は18,000円台での動きになると考える。17-18日の日銀政策決定会合では特段の変化はないと思われるが、一段の緩和の可能性が強調されることによって円高には一定の歯止めがかかるものと考える。
■14日発表の日銀短観においては、先行き判断DIが低下したものの、機械受注統計(10月・9日発表)、GDP2次速報(7-9月・8日発表)など明るさが伺える経済指標もある。原油価格の下落は、日本経済にとってはメリットが多く、輸入物価下落を通じてGDPデフレーターを押し上げており、名目GDPの成長に寄与する。2016年は内需関連(特に消費税駆け込み需要が見込める住宅セクター、会計ソフト、などの企業群)を中心に出直りが期待できるであろう。

 

<調整後は内需系を中心に回復基調へ>
■12月11日時点のIFIS/TIWコンセンサス225(日経225のコンセンサスEPS)は、今期予想ベースはマイナスとなったものの、来期・再来期はプラスであった。医薬品、食品、自動車、建設などがプラスであった。前週比プラスになった企業数の比率は再来期ベースで大きく改善(57.3%)しており、予想EPSの低下トレンドは底打ちしたように見受けられる。

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

17,850円~19,200円 (前回18,000円~19,400円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(12月11日)来期予想ベースEPSをもとに算出

◇IFIS/TIWコンセンサス225(12月11日)

今期予想EPS 1023.59 (前週 1026.29円)
来期予想EPS 1128.86 (前週 1128.07円)
再来期予想EPS 1231.22 (前週 1229.81円)
今期予想PER 18.79 (前週 19.00倍)
来期予想PER 17.04 (前週 17.29倍)
再来期予想PER 15.62 (前週 15.86倍)
来期予想PBR 1.23 (前週 1.25倍)
来期予想ROE 7.22% 前週 7.22%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
6.49% (前週 6.47%)

*12月11 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

 

図1FOMCを前に急落、逆にFOMCで悪材料の出尽くしになる展開か?

 

図2来期予想ベースのプラス企業比率は、 43.4%→56.8%→54.2%→49.7%→47.4%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、52.5%→50.4%→53.4%→41.1%→57.3%。

再来期ベースが急速に回復

[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]

 

出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2012年1月から表示

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り

 

株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。