12月4日妥当レンジ 18,000円~19,400円
米利上げ後の展開を模索する動きに
【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】
<15-16日の米FOMCでの利上げ確度が高まる>
■4日発表の米雇用統計(11月)は非農業部門雇用者数の増加が21.1万人増と市場予想(20万人)を上回るとともに、9月、10月も上方修正された。次回FOMCでの利上げが確実視される。
■3日のECB理事会で決定された金融緩和は、市場期待に届かなかったことからユーロ高・株安を齎したが、4日にドラギ総裁がニューヨークで講演し、一段の緩和に踏み切ることも辞さない姿勢を示した。米国の利上げを控えて切札を温存したとの見方もある。7日の欧州株式市場はやや戻す形になっている。
■7日の日本株市場は、週末のNY市場の上昇を受けて反発したものの、先週末の下落幅435円に対して、戻りが193円と弱いものであった。また、予想に反して輸出株よりも内需株の上昇が強かった。これに関しては、次のような可能性が考えられる。1)米国以外の経済成長は極めて脆弱である、2)米利上げは新興国経済にマイナスの影響を与える可能性がある、3)米国経済もドル高によってインフレ率の鈍化が継続する可能性があり、利上げのペースは緩慢なものが予想される、4)2016年は円高に向かう可能性も指摘されている。
■円高の可能性については、a)資金調達通貨としてユーロ優位性が高まっている、b)原油安等によって日本の経常黒字は大幅に拡大している、c)公的資金などのリバランスが完了して外債投資がほぼ一巡した、d)日銀の追加緩和の可能性に疑問符が強まりつつある、などが挙げられる。
■米利上げについては市場での織り込みが進み、利上げ後の展開を既にマーケットは模索し始めているのかもしれない。
<2万円は依然として大きな壁か>
■12月4日時点のIFIS/TIWコンセンサス225(日経225のコンセンサスEPS)は、全期間でマイナスとなった。非鉄、石油、商社海運などマイナスが大きい。妥当レンジも予想EPSの減少と長期金利の上昇から引き下げられており、現株価がレンジ上限を上回る状態が続く。これまで通り株価上昇過程では利益確定を提案したい。
◇日経平均妥当水準(レンジ)
18,000円~19,400円 | (前回18,350円~19,750円) |
*「IFIS/TIWコンセンサス225」(12月4日)来期予想ベースEPSをもとに算出
◇IFIS/TIWコンセンサス225(12月4日)
今期予想EPS | 1026.29円 | (前週 1034.82円) |
来期予想EPS | 1128.07円 | (前週 1131.15円) |
再来期予想EPS | 1232.99円 | (前週 1229.81円) |
今期予想PER | 19.00倍 | (前週 19.21倍) |
来期予想PER | 17.29倍 | (前週 17.58倍) |
再来期予想PER | 15.86倍 | (前週 16.13倍) |
来期予想PBR | 1.25倍 | (前週 1.27倍) |
来期予想ROE | 7.22% | (前週 7.21%) |
来期予想 インプライド・リスク・プレミアム |
6.47% | (前週 6.45%) |
*12月4日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出
株価は妥当レンジ上限を若干上回る展開が続く、FOMC(15-16日)で一旦材料出出尽くしになる可能性に注意。
来期予想ベースのプラス企業比率は、 50.4%→43.4%→56.8%→54.2%→49.7%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、47.2%→52.5%→50.4%→53.4%→41.1%。
非鉄、石油など資源関連の予想EPSの引き下げ目立つ
[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]
出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2012年1月から表示
「IFIS/TIWコンセンサス225」について IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。 理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。 4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。 〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕 会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。 〔予想EPS増減社数〕 今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。 〔予想PBR(今期末)〕 前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。 〔予想ROE(来期ベース)〕 前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。 〔リスクプレミアム〕 特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り |