10月16日妥当レンジ 17,750円~19,100円
業績不安が織り込まれる時間を経て、11月上昇を予想

2015/10/20

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

<中国危機は遠のいたのか?>
■19日に中国国家統計局が発表した7-9月のGDPは前年同期比+6.9%と市場予想(+6.8%)をやや上回った。また、同日発表された小売売上高(9月)も前年同月比+10.9%と8月(+10.8%)同様に好調を維持している内容であった。輸出は減少するものの内需は堅調であり、輸出はやがて戻ってくるので問題はないとの論調も見られる。しかし、危機的状況にはならないものの、生産拠点のアジア諸国への移転が緩やかに続く中では、ストック調整も長期に亙ることが想像できる。そのため、中国向け輸出の回復には時間を要すると思われる。21日に9月の貿易統計(日本)が発表されるのでその点は注視したい。
■10月中の株式市場は上値の重い展開を予想するが、11月は悪材料が織り込まれることから上昇局面が期待できそうだ。アナリスト・コンセンサス予想は依然として低下トレンドにあるが、2Q決算発表を経ることで業績見通しが織り込まれる。日銀の追加緩和期待も剥落することから(筆者は追加緩和の可能性はないと考えている)、悪材料は一旦消化される。11月4日の郵政3社のIPOは反騰の起爆剤となりそうである。
■ただし、輸出企業にとっては11月以降は為替水準が1年前と差がなくなることから(日銀の量的緩和第二弾が行われたのは2014年10月31日)、円安効果が剥落する。そういう面では、下期以降の増益率の低下は避けられないと考えられる。内需に関してもやや踊り場的な局面にあるだけに、2万円をトライするまでには至らないと考えている。

 

<コンセンサス予想EPSは実質マイナスが続く>
■16日時点のIFIS/TIWコンセンサス225(日経225のコンセンサスEPS)は、再来期ベースがプラスとなった(今期・来期はマイナス)。ただし、先週同様にファーストリテイリング(9983)が大きく影響している。前週比プラス企業数の割合は再び40%割れの水準に落ち込んでいる。

 

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

17,750円~19,100円 (前回17,850円~19,200円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(10月16日)来期予想ベースEPSをもとに算出

 

◇IFIS/TIWコンセンサス225(10月16日)

今期予想EPS 1052.16 (前週 1056.03円)
来期予想EPS 1141.00 (前週 1143.88円)
再来期予想EPS 1240.31 (前週 1238.64円)
今期予想PER 17.38 (前週 17.46倍)
来期予想PER 16.03 (前週 16.12倍)
再来期予想PER 14.75 (前週 14.89倍)
来期予想PBR 1.20 (前週 1.21倍)
来期予想ROE 7.46% 前週 7.48%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
6.78% (前週 6.78%)

*10月16日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

 

図1 
郵政3社のIPOから上昇に向かうか?

 

図2
来期予想ベースのプラス企業比率は、 37.0%→34.4%→40.8%→44.1%→36.9%。 再来期予想ベースのプラス企業比率は、38.0%→32.7%→32.3%→39.6%→32.0%。
再び40%割れの水準に。

[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]

 

出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2012年1月から表示

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り
株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
TIWマガジン「投資の眼」   株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。

このページのトップへ