10月9日妥当レンジ 17,850円~19,200円
追加緩和期待と決算待ちの足場の不安定な状況
【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】
<前週、発表された国内統計は芳しくなかったが>
■8日に発表された9月の機械受注統計では、「船舶・電力を除く民需」の受注額(季節調整済み)が前月比5.7%減と3ヵ月連続でマイナスとなり、受注額としては14年6月以来の低水準であった。同日発表の9月の景気ウオッチャー調査では、現状判断DIが前月の49.3から47.5に下落。家計、企業、雇用の全てで前月比マイナス。先行き判断DIは前月の48.2から49.1と上向いたものの、まだ50を下回る水準であった。
■6日に、IMFは世界経済見通しを下方修正した。世界全体では2015年:3.3%→3.1%、2016年:3.8%→3.6%。日本は、2015年:0.8%→0.6%、2016年:1.2%→1.0%に。
■しかし、こうした中でも株式市場は世界的に好調に推移した。米利上げ時期に関する見通しが先送りになったことや、日銀の追加緩和期待強まったことが主な要因と考えられる。
■中国や新興国の経済減速不安に対して、何か対応策等が打ち出されたわけではないにも係らず、売りが一巡して、心理的に織り込まれたことが大きく影響している。中国の問題が供給力の過剰であるならば、生産調整には長い期間が必要となる。中国向け輸出(金額)は、(春節の影響で-17.3%となった2月を除けば)7月まではプラスで推移していたが、8月は前年同月比-4.6%となった。ASEAN向け輸出はプラスを維持しているが、前年比伸び率は明確に鈍化傾向にある。9月の貿易統計は21日発表予定であるが、注意が必要である。
<コンセンサス予想EPSは実質マイナスが続く>
■9日時点のIFIS/TIWコンセンサス225(日経225のコンセンサスEPS)は、来期ベースがプラスとなった(今期・再来期はマイナス)。ただし、これは8月決算のファーストリテイリング(9983)の対象決算が移行した影響による(予想EPSに対して来期ベース6.1円のプラスの影響)。前週比プラス企業数の割合はやや回復したが、依然として50%を下回っている。
■妥当レンジは、上記のユニクロ効果等もあり上方にシフトさせるが、コンセンサス予想EPSのダウントレンドと緩和期待が剥落した場合の影響には引き続き警戒したい。
◇日経平均妥当水準(レンジ)
17,850円~19,200円 | (前回17,100円~18,400円) |
*「IFIS/TIWコンセンサス225」(10月9日)来期予想ベースEPSをもとに算出
◇IFIS/TIWコンセンサス225(10月9日)
今期予想EPS | 1056.03円 | (前週 1056.47円) |
来期予想EPS | 1143.88円 | (前週 1139.68円) |
再来期予想EPS | 1238.64円 | (前週 1243.94円) |
今期予想PER | 17.46倍 | (前週 16.78倍) |
来期予想PER | 16.12倍 | (前週 15.55倍) |
再来期予想PER | 14.89倍 | (前週 14.25倍) |
来期予想PBR | 1.21倍 | (前週 1.14倍) |
来期予想ROE | 7.48% | (前週 7.33%) |
来期予想 インプライド・リスク・プレミアム |
6.78% | (前週 6.74%) |
*10月9日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出
ユニクロの影響等から来期ベースのコンセンサス予想EPSが上昇。
来期予想ベースのプラス企業比率は、 36.9%→37.0%→34.4%→40.8%→44.1%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、41.4%→38.0%→32.7%→32.3%→39.6%。
やや回復したものの依然として50%割れの状態続く。
[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]
出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2012年1月から表示
「IFIS/TIWコンセンサス225」について IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。 理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。 4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。 〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕 会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。 〔予想EPS増減社数〕 今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。 〔予想PBR(今期末)〕 前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。 〔予想ROE(来期ベース)〕 前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。 〔リスクプレミアム〕 特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り |