9月11日妥当レンジ 17,600円~19,000円
揺らぐ前提条件:コンセンサス予想の下方トレンド続く

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

<揺らぐ市場回復条件>
■8月の工作機械受注額(速報値:9日発表)は前年同月比16.5%減。7月の機械受注統計(10日発表)では船舶・電力を除く民需の受注額が前月比3.6%減と2カ月マイナス。景気ウォッチャー調査(8日発表)も8月の現状判断DIが2.3ポイント低下の49.3、先行き判断DIが3.7ポイント低下の48.2といずれも50を下回った。
■アナリストのコンセンサス予想も低下傾向が目立つようになってきた。上海総合指数の暴落に始まる中国ショックと、米利上げ(見通し)とそれに伴うNY市場の調整がマーケットの懸念材料であり、やがて日本株は回復傾向に入ると考えられてきた。しかし、景況感の悪化と企業業績見通しの低下が色濃くなりつつある中で、マーケット水準の下方シフトの可能性も台頭してきた。
■16-17日の米FOMCでは3つの可能性が考えられる。1)利上げの決定、2)利上げの見送り(年内利上げの可能性を留保)、3)年内利上げを見送ることの表明。1)利上げの場合は、米国株の下落とその影響が一時的に強く出る可能性があるが、悪抜けとなる可能性、2)次回のFOMCへの持ち越しは、現状の不安定なマーケットの持続、3)年内棚上げは一時的には株価の上昇が期待できるが、ドル円が円高に向かう可能性、などが考えれられる。いずれにしても中国経済の減速に対する底打ち感と国内経済指標の改善が表れない限りは株式市場が再び強い上昇トレンドに入る可能性は低いと考える。当面は割安・バリュー銘柄への一本釣りの展開を予想する。

 

<コンセンサス予想EPSは3週連続で来期・再来期がマイナス>
■11日時点のIFIS/TIWコンセンサス225(日経225のコンセンサスEPS)は、全期間において前週比マイナスとなった。来期・再来期ベースでは3週連続マイナスである。前週比プラス企業数の割合は来期ベースでは40%を下回った。40%割れは2012年9月以来、3年ぶりである。 危機感を持って臨む必要があるだろう。マイナスが目立ったのは自動車、電機、商社など、他方でプラスは不動産・建設、電力・ガスなど。
 

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

17,600円~19,000円 (前回17,350円~18,700円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(9月11日)来期予想ベースEPSをもとに算出

◇IFIS/TIWコンセンサス225(9月11日)

今期予想EPS 1059.91 (前週 1060.80円)
来期予想EPS 1148.12 (前週 1153.20円)
再来期予想EPS 1252.69 (前週 1256.27円)
今期予想PER 17.23 (前週 16.77倍)
来期予想PER 15.91 (前週 15.43倍)
再来期予想PER 14.58 (前週 14.16倍)
来期予想PBR 1.19 (前週 1.16倍)
来期予想ROE 7.46% 前週 7.51%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
6.76% (前週 6.83%)

*9月11日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

 

 

図1現株価はレンジ中位であり、まだ十分な割安感はない。

 

 

図2

来期予想ベースのプラス企業比率は、 48.2%→55.1%→48.4%→45.7%→36.9%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、50.4%→58.6%→41.9%→48.1%→41.4%。
来期予想ベースの40%割れは2012年9月以来。

 

[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]

 

 

出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2012年1月から表示

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り

 

株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。