9月4日妥当レンジ 17,350円~18,800円
予想以上の下落であるが、底打ちはFOMC待ち

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

<予想以上の株価下落>
■前回のレポートにおいて、コンセンサス予想EPSの下落にはかなり注意が必要なこと、8月の雇用統計の発表は数字が良くても悪くても株価にはプラスのインパクトが少ない、と警戒を掲げたものの、予想以上のマーケットの下落に見舞われた。
■FOMCを睨んで買い手が不在の中で、外国人投資家のポジション調整と仕掛け的な売り物に沈んだ格好にある。バリュエーション面での株価水準には割安感が台頭しているが、16~17日のFOMCまでは神経質な状況が続くと思われる。
■FOMCにおいて、利上げ発表があれば一時的には株価は下落する可能性は高いものの、悪抜けから出直りの切掛けになることが期待できる。一方で、利上げ見送りの場合は、瞬間的に株価の浮揚が見られても、重石が存続することになる。
■中国は7日に長期投資家に税優遇策を発表したが、経済は今後も不安定な状態が続くだろう。バブル崩壊後の日本と同じように、余剰生産力の調整が必要であり、調整には時間がかかる。財政出動はストック調整を長引かせるだけに取り難い。資本移動の自由を規制しながら金融緩和によって人民元の切り下げをゆっくり図りながら輸出回復を目指すと考えられる。中国の輸出振興は世界的にデフレ傾向を強める可能性があり、新興国に負の連鎖が広がる懸念がる。
■ロイターによれば、IMFのコーチャー・アジア太平洋局副局長は、2015年と16年の日本の成長率見通しを引き下げる可能性があると語った。7-9月のGDPもマイナスに転じる可能性が強く台等しつつある。

<コンセンサス予想EPSは2週連続で来期・再来期がマイナス>
■4日時点のIFIS/TIWコンセンサス225(日経225のコンセンサスEPS)は、2週続けて前週比で来期・再来期ベースがマイナスとなった(今期はプラス)。前週比プラス企業数の割合も50%を下回っている。今回は、大きく妥当レンジを引き下げる。予想EPSの減少とテクニカル要因(推計モデルの構造)による。

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

17,350円~18,700円 (前回18,300円~19,700円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(9月4日)来期予想ベースEPSをもとに算出

◇IFIS/TIWコンセンサス225(9月4日)

今期予想EPS 1060.80 (前週 1057.92円)
来期予想EPS 1153.20 (前週 1154.33円)
再来期予想EPS 1256.27 (前週 1258.59円)
今期予想PER 16.77 (前週 18.09倍)
来期予想PER 15.43 (前週 16.58倍)
再来期予想PER 14.16 (前週 15.20倍)
来期予想PBR 1.16 (前週 1.24倍)
来期予想ROE 7.51% 前週 7.51%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
6.83% (前週 6.68%)

*9月4日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

TIW1

レンジはさらに下方にシフト。割安感が台頭してきた

TIW2

 来期予想ベースのプラス企業比率は、 51.5%→48.2%→55.1%→48.4%→45.7%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、
53.8%→50.4%→58.6%→41.9%→48.1%。

2週連続50%割れ。

[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]

 TIW3

期待収益率、インプライド・リスク・プレミアムは、長期的な中位の水準に。

 TIW4

期待収益率、コンセンサス予想EPSの上昇トレンドは、来期・再来期では既に大きく崩れている

 

出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2012年1月から表示

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り

 

株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。