8月7日妥当レンジ 19,300円~20,800円
国内企業4-6月期の好調は織り込みを終えたか?

2015/08/11

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

<米国株と対照的な日本株の好調>
■7日に発表された7月の米雇用統計は非農業部門雇用者数が前月比21.5万人増と市場予想(22万人増)をやや下回ったものの好調に推移している。雇用統計の好調を受けて早期利上げ観測が強まっている。
■米国企業の4-6月期の純利益は前年同期比1.6%増に留まった模様(トムソン・ロイター7日付け)。原油安によるエネルギー関連企業の苦戦に加えてドル高が輸出企業の業績を悪化させている。7-9月期の市場予想は減益が見込まれている。
■企業業績の悪化と早期利上げ観測から米国株の下落が続いており、NYダウは年初来ではマイナス圏にある。
■国内上場企業の4-6月期の経常利益は前年同期比24%増に達した(日経集計)。原油安・円安効果と内需型企業においては前年が消費増税直後であったことが影響している。米国・欧州の企業業績が対照的であることから日本株への資金流入が生じているものと考えられるが、業績好調企業の株価水準はバリュエーション面では説明の出来ないものも少なくない。

 

<コンセンサス予想EPSは来期、再来期が引き続きマイナス>
■7日時点のIFIS/TIWコンセンサス225(日経225のコンセンサスEPS)は、今期予想値はプラスであったものの、来期・再来期ベースは4週続けて前週比マイナスとなった。KDDI(9433)、ファナック(6954)、コナミ(9766)、デンソー(6902)のマイナスインパクトが大きかった。ただし、前週比プラス企業数は、全期間においてマイナス企業数を上回っており、悪いばかりでもなさそうである。
■年初からの上昇は、小売、食品、医療関連など内需型の(従来は)ディフェンシブ系の銘柄の上昇率が高く、自動車・機械などは海外情勢への懸念からむしろ高くない。個別に見ると、業績好調な内需系企業のバリュエーションは説明が難しい水準にある。マーケットの主役が輸出系にスイッチしてゆくシナリオは米国を除くと描き難く、米早期利上げは逆風になる可能性が強い。押し目のタイミングを待つ時間と考える。

 

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

19,30円~20,800円 (前回19,350円~20,850円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(8月7日)来期予想ベースEPSをもとに算出

 

◇IFIS/TIWコンセンサス225(8月7日)

今期予想EPS 1053.78 (前週 1053.07円)
来期予想EPS 1156.33 (前週 1162.41円)
再来期予想EPS 1260.24 (前週 1262.74円)
今期予想PER 19.67 (前週 19.55倍)
来期予想PER 17.92 (前週 17.71倍)
再来期予想PER 16.44 (前週 16.30倍)
来期予想PBR 1.35 (前週 1.34倍)
来期予想ROE 7.53% 前週 7.56%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
6.53% (前週 6.58%)

*8月7日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

 

 図1予想EPSの伸び悩みから妥当レンジの上方シフトは期待しづらい

 

図2 
来期予想ベースのプラス企業比率は、57.6%→45.0%→45.0%→48.1%→51.5%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、51.9%→51.1%→53.4%→49.5%→53.8%。

4週ぶりに50%を回復(来期ベース)。

[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]

 

出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2012年1月から表示

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り
株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
TIWマガジン「投資の眼」   株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。

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