完成車メーカー1Q決算と今後の株価動向 -高田 悟-
今月4日で国内完成車メーカー7社の16/3期1Q(4-6月)決算が出揃った。7社合計の営業利益は前年同期比18%増の約1兆4,500億円。純利益は同14%増の約1兆1,600億円となり1Qとして過去最高となった。業績拡大から税負担が膨らんだマツダ、インド子会社好調により少数株主持分が増加したスズキ、東南アジアに軸足を置く三菱自動車が最終段階減益となったが、トヨタ自動車、日産自動車、富士重工業が過去最高純益を確保した。概ね堅調な決算にも関わらず、決算発表後の株価をどこも冴えない。このところの業績低迷から前年同期比2桁営業増益がサプライズとなったホンダでさえ、急騰後、株価は伸び悩む。
販売台数を見ると、新規投入モデルのヒットが続くマツダ、富士重工業が前年に比べ2桁の台数増になった以外はあまり大きく台数を伸ばせていない。北米好調からホンダ、日産は一桁だが台数を伸ばしたものの、トヨタは国内販売の悪化やアジア市場の低迷から北米以外の全ての地域セグメントの販売が前年割れとなり世界販売台数は前年を割り込んだ。スズキも国内軽不振が影響し世界販売台数は前年割れとなった。こうした中、3カ月間の為替レートが平均で1米ドル121円(前年102円)、1ユーロ134円(同140円)となり、対米ドルで約20円、前年から円安になったことが業績に大きな追い風となった。つまり、北米で台数を伸ばし、対ドルでの為替感応度(為替変動に対する利益変動の割合)が高く、対ユーロでの為替感応度が低い会社の業績が1Qはそれなりに良かったと言える。
さて、足下の市場に目を向ける。国内は軽販売の前年割れが続き、登録車は戻り気味も勢いがない。世界最大市場の中国の販売はこのとこころ月次が前年割れに転じ、足下で急ブレーキがかり始めた。特にシェアの高い欧米メーカーの落ち込みが顕著になり始めたことが気にかかる。更には、日系の牙城、東南アジアはタイ長期低迷に加え、最大市場に成長しインドネシアの落ち込みが厳しい。そして、南米はブラジルを中心に低迷。欧州はロシアを除けば回復基調もペースは緩やかで日系への影響は限定的だ。インドは好調だがスズキの伸びの反映にすぎない。眺めると7月も前年同月比5.3%増となり、年間では14年ぶりの1,700万台回復が見込まれ、特に大型車販売が好調の米国を中心とした北米のみが世界市場を支えていると言える。こんな状況下で北米が崩れたらどうなることだろう。前期後半大きく円安が進んだため為替には過大な期待はこの先、持てない。むしろ、米国で利上げが現実化したら次の利上げを織り込み新興国通貨安が進み新興国景気を抑えることが懸念される。
自動車株の伸び悩みは市場が抱えるこうした憂鬱の反映と言えるだろう。中国市場の急減速の影響は決算期のずれから2Q(7-9月)以降の決算で明らかになる。最大市場の中国、そして、牙城の東南アジア市場への懸念が晴れぬ限りは、更なる円安進行がなければ全般に株価の上値が重いと考えざるを得ない。こうした中では、各地域の市場動向に関わらず商品力から台数を伸ばしているマツダ、富士重工業、そして市場堅調な米国で主力車種の世代交代を予定するホンダの業績や株価に想定的に期待が持てると考える。