7月31日妥当レンジ 19,350円~20,850円
コンセンサス予想EPSが弱含むトレンド継続

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

<米経済指標次第では輸出関連が弱含む展開も>
■前回の当レポートでも指摘したが、4-6月のGDPがマイナスに転ずる可能性が強まっている。7月31日に発表された6月の家計調査では、実質消費支出(2人以上の世帯)が前年同月比で2.0%減少した(前月比では3.0%のマイナス)。天候要因やサマーセールの時期が7月にずれ込んだ要因もあるものの、前年が消費増税後に消費が低迷した時期であることを考慮すれば、家計の防衛意識は依然として強いと言える。
■ISM製造業景況感指数(3日)、ADP雇用統計、ISM非製造業景況感指数(5日)、米雇用統計(7日)。今週は、米国経済指標の発表が続く。ドル高と利上げ観測から米国の経済成長率が抑えられているとの指摘もある。
■3月期企業の4-6月決算が本格化しており、前年同期比では概ね好調に推移している。しかしながら、通期予想においてはコンセンサス予想EPSは3週連続で全期間マイナスとなった。
■輸出は数量ベースでは伸び悩んでおり、現状の為替水準が織り込まれているとするならば、輸出企業の予想EPSは頭打ちとなるだけに4-6月決算が好調でも単純に強気にはなれない。

 

<コンセンサス予想EPSは3週連続全期間マイナス>
■31日時点のIFIS/TIWコンセンサス225(日経225のコンセンサスEPS)は、3週続けて全期間(今期・来期・再来期)の予想値が前週比マイナスとなった。前週比プラス企業数では来期、再来期でマイナス企業数を下回った。マイナス寄与が大きい銘柄は、ファナック(6954)、東京エレクトロン(8035)、富士重工業(7270)、など。
■中国経済の動向、米利上げ開始時期の影響に対する懸念、国内では消費支出や貿易統計を睨んだ慎重スタンスが暫く続きそうである。引き続きボックス圏の動きと見るが、やや上値が重たくなってきたような印象である。
■米投資ファンドであるサードポイントのスズキ(7269)株式保有に見られるようにアクティビストの動きが活発化している。マーケットの主力株が伸び悩む中で、キャッシュリッチ、低配当性向のバリュー銘柄への物色も一考。

 

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

19,350円~20,850円 (前回19,350円~20,850円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(7月31日)来期予想ベースEPSをもとに算出

 

◇IFIS/TIWコンセンサス225(7月31日)

今期予想EPS 1053.07 (前週 1056.19円)
来期予想EPS 1162.41 (前週 1166.96円)
再来期予想EPS 1262.74 (前週 1265.29円)
今期予想PER 19.55 (前週 19.45倍)
来期予想PER 17.71 (前週 17.61倍)
再来期予想PER 16.30 (前週 16.24倍)
来期予想PBR 1.34 (前週 1.33倍)
来期予想ROE 7.56% 前週 7.56%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
6.58% (前週 6.58%)

*7月31日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

 

図1 
妥当レンジの上方へのシフトは、止まった状態。

 

 

 
図2来期予想ベースのプラス企業比率は、59.8%→57.6%→45.0%→45.0%→48.1%。

再来期予想ベースのプラス企業比率は、56.8%→51.9%→51.1%→53.4%→49.5%。

3週連続で50%を下回る(来期ベース)。再来期ベースも50%割り込む。

[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]

 

 出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2012年1月から表示

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り
株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。