7月3日妥当レンジ 19,150円~20,600円
ギリシャ情勢は混迷に、梅雨明けを待つ展開

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

<ギリシャ国民投票で緊縮案を否決>
■EU緊縮策の是非を問うギリシャの国民投票(5日)は、60%が否決という圧倒的な内容であった。7日のユーロ圏首脳会議においてギリシャ側が新提案を示すことが予定されているが、ECBによる資金供給を含めて混沌とした出口の見えない状態にある。
■6日の日本株市場は、1)ギリシャの国民投票の結果、2)上海市場の株価急落、3)6月の米雇用統計を受けて円高に推移していること、などを受けて、日経平均20,000円付近まで大幅下落した。仮にギリシャがユーロ離脱という結果を迎えたとしても米国や日本には直接的な影響は限定的であることは広く認知されている。米国経済指標は、雇用統計を除けば好調に推移していること、スーパーマーケットなど国内景気も明るさが増してきていることなどから、日本株がこれ以上に大きく崩れることは考え難い。しかし、混沌とした曇天が晴れるには至らす、上値に対しては押さえられる展開が今しばらく続きそうである。

 

<コンセンサス予想EPSは来期・再来期がマイナスであるが>
■3日時点のIFIS/TIWコンセンサス225(日経225のコンセンサスEPS)は、今期予想ベースはプラスであったものの、来期・再来期は僅かではあるがマイナスとなった。これは日経平均株価に影響の大きいソフトバンクグループ(9984)の見通しの変化によるものであり、前週比で予想EPSがプラスになった企業の比率は高い水準で50%超を維持しており、懸念されるものではない。
■既に2月期決算企業の1Q決算が始まっているが概ね好調に推移している。7月下旬から始まる3月期決算企業の1Q決算次第ではマーケットは上値をトライする展開も期待できる。マーケットが不安定な中での中小型株への資金シフトが顕著であるが、深押しする局面では、主力株の押し目を拾ってゆきたい。

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

19,150円~20,600円 (前回 19,300円~20,750円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(7月3日)来期予想ベースEPSをもとに算出

 

◇IFIS/TIWコンセンサス225(7月3日)

今期予想EPS 1057.02 (前週 1055.47円)
来期予想EPS 1167.75 (前週 1168.20円)
再来期予想EPS 1263.75 (前週 1264.80円)
今期予想PER 19.43 (前週 19.62倍)
来期予想PER 17.59 (前週 17.72倍)
再来期予想PER 16.25 (前週 16.37倍)
来期予想PBR 1.33 (前週 1.34倍)
来期予想ROE 7.56% 前週 7.56%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
6.52% (前週 6.51%)

*7月3日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

 

 

図1
7/6(月)の下落を考慮すれば、レンジの中位あたりの水準。

 

図2

来期予想ベースのプラス企業比率は、56.1%→65.1%→64.7%→59.1%→59.8%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、53.5%→62.6%→56.1%→53.8%→56.8%。

来期ベースではプラス比率を堅持しており、株価の上昇基調は崩れていない。

[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]

 

 出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2012年1月から表示

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り
株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。