6月5日妥当レンジ 19,100円~20,550円
世界的に金利がやや上昇気味にあり、頭の重い展開続く
【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】
<米雇用統計を受けて金利上昇>
■6月5日に発表された5月の米雇用統計は非農業部門の雇用者数が28万人増と市場予想(約22万人)を大きく上回った。失業率は5.5%と前月よりも0.1ポイント悪化したものの、求職者数が増加したことによるものであり、雇用情勢が強いことを表している。これを受けて米長期金利(10年物国債利回り)が2.43%にまで一時上昇した。国内長期金利(10年国債利回り)も月曜(8日)は0.49%となっている。
■6月4日、ギリシャは6月の月内に期限を迎える約15億ユーロ(2100億円)の債務返済を月末に繰り延べることをIMFに通知した。欧州連合(EU)等が求める財務改革案を受け入れるのではなく、時間稼ぎと自らのデフォルトを交渉材料にしたとも思われる。ドイツの長期金利も4月下旬の0.1%を切る水準から0.8%台に上昇している。
■米雇用統計の予想以上の強い数字から利上げ時期の予想が前倒しされ、金利上昇と、NY市場は緩やかな株価の調整が続いている。
■米国金利上昇はドル高・円安によって国内の輸出企業にはメリットが大きいものの、国内長期金利も連れ高しており、株価バリュエーション面ではマイナスに働く。今後は、日銀の金融緩和スタンス(維持)の確認が求められるであろう。
<コンセンサス予想EPSは来期・再来期が若干マイナス>
■5日時点のIFIS/TIWコンセンサス225(日経225のコンセンサスEPS)は、今期予想は前週比プラスであったものの、来期・再来期は若干のマイナスであった。これは特定企業の見通しが影響しており、前週比プラス変化した企業数はマイナス企業数を上回った状態が全期間で続いている。
■今回は、国内長期金利の上昇(0.39%→0.48%)から妥当レンジを引き下げる。目先的にはコンセンサス予想EPSが上方に大きくシフトする要素が見当たらないことから、金利動向の影響が強まりそうだ。輸出型・内需型で株価の明暗が分かれそうであるが、ギリシャ問題が終結するまではやや方向感に乏しい中で、上値の重い展開が続きそうだ。
◇日経平均妥当水準(レンジ)
19,100円~20,550円 | (前回 19,450円~20,950円) |
*「IFIS/TIWコンセンサス225」(6月5日)来期予想ベースEPSをもとに算出
◇IFIS/TIWコンセンサス225(6月5日)
今期予想EPS | 1043.41円 | (前週 1040.27円) |
来期予想EPS | 1157.65円 | (前週 1158.61円) |
再来期予想EPS | 1255.06円 | (前週 1255.22円) |
今期予想PER | 19.61倍 | (前週 19.77倍) |
来期予想PER | 17.67倍 | (前週 17.75倍) |
再来期予想PER | 16.30倍 | (前週 16.38倍) |
来期予想PBR | 1.34倍 | (前週 1.35倍) |
来期予想ROE | 7.58% | (前週 7.60%) |
来期予想 インプライド・リスク・プレミアム |
6.52% | (前週 6.62%) |
*6月5日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出
妥当レンジは、長期金利の上昇から下方にシフト。妥当レンジのほぼ上限にあり、今後の金利動向によっては調整の可能性が強まった。
国債利回りはやや上昇したものの、予想配当利回りの上昇からスプレッドはあまり縮まっていない。配当利回りが株価を下支えるか?
インプライド・リスク・プレミアムで見れば、まだ株価上昇余地がある。しかし、期待収益率では危険水準。前回も「米国長期金利の変化に要注意(=米国金利が上がる局面では国内長期金利も引っ張られる)」と書いたが、早くも現実化か?
来期予想ベースのプラス企業比率は、61.9%→74.1%→55.1%→53.3%→56.1%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、59.5%→64.0%→52.4%→57.6%→53.5%。
緩やかなプラス傾向(50%以上)が続く限り、マーケットの大崩はないと考える。
[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]
出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2012年1月から表示
「IFIS/TIWコンセンサス225」について IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。 理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。 4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。 〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕 会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。 〔予想EPS増減社数〕 今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。 〔予想PBR(今期末)〕 前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。 〔予想ROE(来期ベース)〕 前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。 〔リスクプレミアム〕 特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り |