3月20日妥当レンジ 18,700円~20,150円
「官制相場の幻想?」も材料に、騰勢が続く展開か

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

<FOMC通過により米利上げ時期予想は後ろに移行>
■18日のFOMC声明において「忍耐強く」の表現は削除されたものの、政策金利予測や中期経済見通しの引き下げから、マーケットの米国利上げ時期に対する予想が後ろに移行した。12月時点では「忍耐強く」の表現は今後2回のFOMCでは利上げしないと解釈されていたことから、今回表現が削除されることによって6月の利上げ開始を市場は事前に織り込んでいた。ユーロ/ドルは1.05ユーロ/ドル割れから昨日には1.09台にまで回復している。
■利上げ時期見通しの後ろ倒しから、米株式市場は上昇に転じ、世界的な株高に繋がっている。昨日の東京市場では、ドル円が120円を割り込む円高にもかかわらず輸出企業も含めて上昇が目立ち、高値更新。
■日本株の上昇は、1)世界的な株高に加えて、2)企業業績の堅調な拡大、3)議決権行使助言会社の最大手である米ISSによるROE5%基準発表(※)とそれに対応した企業の株主還元策等の発表、4)GPIF(年金積立金管理運用独立法人)をはじめとした公的資金の株式組入比率変更に伴う買いが発現しているという市場観測、などによる。
(※) 5年平均でROE5%未満の企業の役員の再任を認めないというもの

 

<コンセンサス予想EPSは、来期・再来期がマイナス>
■3月20日時点の、IFIS/TIWコンセンサス225(日経225のコンセンサスEPS)は、来期・再来期ベースがマイナスとなった。しかし、これはソフトバンク(9984)の予想EPSのマイナスが大きく影響しており、前週比予想EPSがプラスとなった企業の比率は、全期間において50%を超える水準にあった。
■20日現在の12ヵ月移動平均ベースの妥当レンジは19,590円~21,160円に上方シフトしており、 そのため現株価は、依然としてレンジ下限を株価が上回ってきた水準である。2ヵ月後に到来する対象決算期の移行を考慮すれば、引き続き、押し目は強気で。なお、FOMCを無事に通過したことで、市場は強気一色になりがちであるが、急上昇の反動リスクには一応の注意はしておきたい。

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

18,700円~20,150円 (前回 18,300円~19,700円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(3月20日)来期予想ベースEPSをもとに算出

◇IFIS/TIWコンセンサス225(3月20日)

今期予想EPS 925.67 (前週 925.43円)
来期予想EPS 1052.24 (前週 1052.65円)
再来期予想EPS 1154.56 (前週 1155.38円)
今期予想PER 21.13 (前週 20.81倍)
来期予想PER 18.59 (前週 18.29倍)
再来期予想PER 16.94 (前週 16.66倍)
来期予想PBR 1.43 (前週 1.42倍)
来期予想ROE 7.72% 前週 7.74%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
6.69% (前週 6.65%)

*3月20日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

 

図1

妥当レンジ上限に近づいているが、12ヵ月フォワードの移動平均で見た場合の妥当レンジは、19,590円~21,160円。

 

図2 

来期予想ベースのプラス企業比率は、50.0%→47.9%→43.2%→63.2%→51.9%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、56.2%→49.4%→46.6%→65.3%→54.5%。

[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意] 

図3

明確な根拠はないのだが、経験則から12ヵ月フォワードの移動平均レンジの下限と日経平均株価の連動性は高い。移動平均下限を株価が下回れば“買いシグナル”、上回れば“売りシグナル”。ここ2ヵ月近くは一体的に推移。

図4

期待収益率で見れば株価はピークをつけてもおかしくはない水準。しかし、インプライド・リスク・プレミアムでは、必ずしも割高ではない。これは金利(国債利回り)の低下による。米国利上げなどによって国内金利も上向くようだと注意が必要。

出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2012年1月から表示

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り
株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。