3月6日妥当レンジ 18,200円~19,600円
底堅い展開、米経済指標好調から輸出関連株に回帰

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

<2月の米雇用統計は市場予想を上回る>
■6日発表の米雇用統計(2月)は非農業部門雇用者数が市場予想を上回り前月比29.5万人増となった。失業率も前月の5.7%から5.5%に改善し、米国経済が強い回復基調にあることを裏付けた。これに伴って早期利上げ観測が台頭し、ドル高、金利上昇、株安となった。ただし、ECBの量的緩和導入でユーロ下落が大きい中、ドル独歩高に対する懸念が米国内で強まっていることから、早期利上げにはFRBは慎重になるとの見方も他方に存在する。今後も利上げ時期を巡る市場の揺らぎが続きそうだ。
■東京市場は9日(月曜)こそはNY株安の影響を受けたものの、国内経済指標への反応を強めている。同日発表となった景気ウォッチャー調査において現状判断DIが前月比4.5ポイント改善し、50.1になったことが好感されている。120円超/ドルの円安となったことから内需株に対して出遅れ感が強かった輸出株への回帰が顕著になっている。

 

<コンセンサス予想EPSは、全期間で前週比プラスだが>
■3月6日時点の、IFIS/TIWコンセンサス225(日経225のコンセンサスEPS)は、前週比で全期間がプラスとなった。しかしながら、前週比予想EPSがプラスとなった企業の比率は2週連続で来期・再来期ベースが50%を下回った。業種的には石油、商社、プラント、化学などがやや弱含みである。小売など内需関連銘柄は現状の景気回復感が織り込まれつつあるが、一部業種には注意が必要と考えられる。
■6日現在の12ヵ月移動平均ベースの妥当レンジは19,050円~20,530円であり、 現在の株価水準は依然としてその下限を下回っている。2ヵ月~2ヵ月半後に到来する対象決算期の移行を考慮すれば、押し目は強気で臨むスタンスを堅持すべきであろう。
■TIWモデルポートフォリオは2月中に輸出関連銘柄を多く新規採用した。具体的銘柄については3月2日付けレポートをご参照いただきたい。

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

18,200円~19,600円 (前回 18,150円~19,550円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(3月6日)来期予想ベースEPSをもとに算出

◇IFIS/TIWコンセンサス225(3月6日)

今期予想EPS 925.40 (前週 923.52円)
来期予想EPS 1050.47 (前週 1050.22円)
再来期予想EPS 1152.19 (前週 1150.29円)
今期予想PER 20.50 (前週 20.35倍)
来期予想PER 18.06 (前週 17.90倍)
再来期予想PER 16.47 (前週 16.34倍)
来期予想PBR 1.41 (前週 1.39倍)
来期予想ROE 7.78% 前週 7.75%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
6.72% (前週 6.77%)

*3月6日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

 

図1

12ヵ月移動平均で見た場合の妥当レンジは、19,050円~20,530円。3ヵ月後の対象決算期の移行を意識するならば、まだ弱気になる必要はない。 

図2

来期予想ベースのプラス企業比率は、55.6%→51.0%→50.0%→47.9%→43.2%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、52.1%→53.9%→56.2%→49.4%→46.6%。
来期・再来期ともに50%を下回って低下。翌週以降のデータに要注目。
[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意] 

 

出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2012年1月から表示

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り
株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。