1月9日妥当レンジ 17,400円~18,750円
インプライド・リスク・プレミアムは10月の株価急落時を上回る

2015/01/14

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

<リスク・プレミアムの上昇は恐慌の前兆ではない>
■1月9日時点のインプライド・リスク・プレミアム(株価が内包するリスクプレミアム:IRP)の値は、株価が急落した昨年10月17日の7.07%を上回る7.08%となった。IRPの上昇は投資家の態度がリスクオフに傾いていることを示しており、平常時であれば7.00%を上回ることはあまり無い。実際にアベノミクス以降は、13年5月(7.00%)を含めて3回目である。
■当レポートに用いているデータの収集は2009年4月から開始していることから、リーマンショック前・直後がどのようにIRPが推移したかは不明である。しかし、ギリシャ債務問題・ユーロ危機においては8%を超える水準にまで上昇している。市場が恐慌状態にある際には、平常時の状況(レンジ)とは異なることは言うまでもないだろう。
■それでは、現在は恐慌への入口かと言うと決してそうではない。何故ならIRPが上昇している最大の要因は長期金利の低下による。IRPに長期金利を加えた投資家の期待収益率は7.35%とこの2年間の平均的水準にあり、8.5%にまで達した恐慌状態とはかけ離れている(3頁上図ご参照)。
■配当利回りと長期金利の差も直近では1%を越えており、株式には割安感が強く存在する。企業業績の上向き傾向が続いている状況下では、押し目買いの好機であるという見方に変わりは無い。

 

<コンセンサス予想EPSは、前週比で全期間プラス>
■1月9日時点の、IFIS/TIWコンセンサス225(日経225のコンセンサスEPS)は、前週比で全期間が大きく増加した。この増加幅の殆どは、8月決算の1Qまたは2月決算企業の3Q決算発表に伴うプラスであり、セブン&アイHD(3382)、イオン(8267)、ファーストリテイリング(9983)の3銘柄の寄与が大きい。しかし、コンセンサスEPS(来期・再来期ベース)が前週比プラスとなった企業比率は60%を超えており、企業業績見通しは引き続き好調が続いている。今回は、妥当レンジをやや上方に修正する。

 

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

17,400円~18,750円 (前回 17,300円~18,650円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(1月9日)来期予想ベースEPSをもとに算出

◇IFIS/TIWコンセンサス225(1月9日)

今期予想EPS 926.51 (前週 922.82円)
来期予想EPS 1040.29 (前週 1033.08円)
再来期予想EPS 1137.81 (前週 1131.24円)
今期予想PER 18.56 (前週 18.91倍)
来期予想PER 16.53 (前週 16.89倍)
再来期予想PER 15.11 (前週 15.43倍)
来期予想PBR 1.31 (前週 1.33倍)
来期予想ROE 7.91% 前週 7.86%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
7.08% (前週 6.95%)

*1月9日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

 

 

図1

株価は妥当レンジ下限を下回る→買いシグナル点灯! 

 

 図2

来期予想ベースのプラス企業比率は、63.0%→60.3%→63.5%→57.1%→60.6%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、53.1%→57.4%→63.2%→51.9%→66.1%。 プラス企業比率は良好状態続く。
 (注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になる)

図3

 期待収益率は安定的に推移(数値が大きい時がリスクオフ、小さい時がリスクオン)。

図4

昨年5月の本決算以降、なだらかな増加傾向が続いている。

出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2012年1月から表示

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り
株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
TIWマガジン「投資の眼」   株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。

このページのトップへ