11月28日妥当レンジ 17,150円~19,950円
米国株式市場の高値更新を受けて好調持続
【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】
<原油相場下落を受けて追加金融緩和の思惑買い?>
■11月28日のOPEC(石油輸出国機構)総会において協調減産が見送られたことを弾きがねに原油価格が続落した。米国のシェールオイル・ガスの供給拡大が進む中で、ロシアへの経済制裁やイスラム国など紛争継続などのリスク要因により維持されてきた価格が一気に崩れた形となった。減産による原油価格維持よりもOPEC主要国がシェア拡大に転換したとの見方もある。いずれにしても、供給力の拡大と再生可能エネルギーのコストの低下が進んでいることなどから原油価格は趨勢的に価格が抑えられる傾向が強まっているようである。
■日本株上昇の理由として、原油価格下落で物価上昇率が低下するから日銀が再度緩和を行うというトンデモ説もあったが、日本をはじめ欧州、中国・東南アジアなど石油輸入国では交易条件の改善が見込め、世界経済にとってはポジティブな影響が期待できることが評価されたものと考える。
■ 今週は週末(12/5)の米雇用統計発表を控えるが、波乱なく推移するものと考える。日本株は米株市場の堅調な展開をトレースする動きを予想する。
<コンセンサス予想EPSは僅かながらも全期間プラス>
■IFIS/TIWコンセンサス225(日経225のコンセンサスEPS)は、今回も小幅ながら今期・来期・再来期ベースのいずれもがプラスとなった。円安を享受しやすい業種でのプラスがやや目立っている。日経平均の週末値は前週よりも上昇したにもかかわらず、予想ROEがやや上昇したことと、長期金利が一段と低下したことを受けて、インプライド・リスク・プレミアムはやや上昇した(=割安方向)。それを踏まえて日経平均の妥当レンジを今週もやや上方修正する。
■現時点のコンセンサス予想では、来期EPSは+11.7%、再来期予想EPSは+9.7%。米国経済の回復基調が持続され、中国を始め世界経済において変調がないことを前提にすれば、来年度(2015年度)は、企業収益水準からは日経平均20,000円も視野に入ってくる。妥当レンジ水準から見て(本年)年末までに18,000円の展開も十分有り得るだろう。
◇日経平均妥当水準(レンジ)
17,150円~19,950円 | (前回 16,900円~19,700円) |
*「IFIS/TIWコンセンサス225」(11月28日)来期予想ベースEPSをもとに算出
◇IFIS/TIWコンセンサス225(11月28日)
今期予想EPS | 917.65円 | (前週 917.49円) |
来期予想EPS | 1024.71円 | (前週 1023.04円) |
再来期予想EPS | 1123.67円 | (前週 1121.47円) |
今期予想PER | 19.03倍 | (前週 18.92倍) |
来期予想PER | 17.04倍 | (前週 16.97倍) |
再来期予想PER | 15.54倍 | (前週 15.48倍) |
来期予想PBR | 1.35倍 | (前週 1.34倍) |
来期予想ROE | 7.90% | (前週 7.88%) |
来期予想 インプライド・リスク・プレミアム |
6.87% | (前週 6.83%) |
*11月28日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出
妥当レンジは2009年以降、最高水準を更新中。
来期予想ベースのプラス企業比率は、46.3%→59.5%→66.9%→60.9%。
再来期予想ベースは58.4%→45.9%→57.1%→63.3%→63.2%。
企業業績見通しは引き続き堅調に推移。
前週に引き続き、投資家の期待リターン(要求利回り)はやや上昇。予想ROEも上向いており、株価が緩やかに上昇しているにもかかわらず、警戒感は後退。
長期国債利回りの低下によって金利と配当利回りのスプレッドが上昇。
出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2012年1月から表示
「IFIS/TIWコンセンサス225」について IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。 理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。 4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。 〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕 会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。 〔予想EPS増減社数〕 今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。 〔予想PBR(今期末)〕 前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。 〔予想ROE(来期ベース)〕 前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。 〔リスクプレミアム〕 特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り |