11月7日妥当レンジ 16,350円~18,950円
コンセンサスEPSに減少懸念

2014/11/12

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

<衆議院解散を睨む展開>
■7日発表の10月の米雇用統計は非農業部門雇用者数は前月より21.4万人増加した。市場予想(23.5万人)は下回ったものの、20万人超の増加を確保したことや、8月、9月の数値が上方に改訂されたことから概ね好感された。ただし、雇用者増は飲食などサービス業が中心であるために、時間当たり平均労働賃金の上昇は前月比0.1%増にとどまっている。その結果、FRBの利上げ時期に対する市場観測は、やや後ろに移行すると推察される。
■俄かに衆議院解散が現実味を帯びてきた。景気が停滞する中で来年10月実施予定の税率10%への引き上げに対して慎重論が強まってきている。解散・引き上げ延期となれば消費者心理も好転することと、金融緩和の長期継続が期待できることから、株式市場はポジティブな反応が予想されよう。

 

<コンセンサス予想EPSは一転マイナス>
■IFIS/TIWコンセンサス225(日経225のコンセンサスEPS)は、今期・来期・再来期ベースのいずれもがマイナスとなった。業種による明確な傾向はあまり無いものの、来期予想ベースでは、プラス企業には電機、自動車、機械など輸出産業が多い。マイナスは、電力、商社、不動産などやや内需型産業が多いように見受けられる。
■来期・再来期ベースでは、前週比プラス企業数がマイナス企業数を下回っており、先行きの企業業績に対して伸びが鈍化する傾向にある。この点は注意をして見守る必要があるだろう。日経平均の妥当レンジは今回も若干上方に修正する。
■議決権行使助言大手の米ISSが、過去5年間のROEの平均値が5%を下回る企業について、株主に経営トップの取締役選任議案に反対するよう勧告することを発表した。高ROE企業への資金シフトが続くものと考える。
■衆院解散の判断となる17日発表予定の7-9月のGDP速報値に対する注目が高まっている。今週は、政局に対する情報や憶測でマーケットが動く可能性もあるが、全般的には模様眺めの展開が予想される。

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

16,350円~18,950円 (前回 16,150円~18,750円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(11月7日)来期予想ベースEPSをもとに算出

 

◇IFIS/TIWコンセンサス225(11月7日)

今期予想EPS 911.38 (前週 919.32円)
来期予想EPS 1011.71 (前週 1013.28円)
再来期予想EPS 1108.17 (前週 1110.97円)
今期予想PER 18.52 (前週 17.85倍)
来期予想PER 16.68 (前週 16.20倍)
再来期予想PER 15.23 (前週 14.77倍)
来期予想PBR 1.30 (前週 1.27倍)
来期予想ROE 7.79% 前週 7.83%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
6.77% (前週 6.89%)

*11月7日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

 

 

図1 

妥当レンジは2009年以降、最高水準を更新。 

 

図2 

来期予想ベースのプラス企業比率は、54.6%→44.8%→57.1%→46.3%。 再来期予想ベースは58.8→48.9%→58.4%→45.9%。再び50%割れ。 

 

図3

投資家の期待リターン(要求利回り)は10月の下落前の水準にあり、企業業績(コンセンサス予想EPS)の減少が続くようであれば要注意。 

 

図4

来期増益率は再び鈍化傾向。 

 

 

出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2012年1月から表示

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り
株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。