10月31日妥当レンジ 16,150円~18,750円
追加緩和等から底堅い展開続く

2014/11/05

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

<追加緩和によって市場の弱気心理を払拭>
■31日発表の9月の家計調査では消費支出(2人以上世帯)は前年同月比5.6%減少、雇用統計では9月の有効求人倍率が1.09倍と前月比0.01低下、失業率も3.6%と0.1%上昇した。さらに、9月の消費者物価指数(コア)は消費増税による押し上げ効果を除いた実質では1.0%の上昇にとどまった。
■こうした経済環境の減速感を受けて、日銀は、31日の金融政策決定会合において、資金供給量を10~20兆円増額し、年80兆円に拡大する追加緩和を決定した。
■また、同日にGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は、株式運用の比率を5割に高める新たな資産構成の目安を発表した。国内株式は従来の12%(±6%)から25%(±9%)に変更された。
■こうした発表を受けて、31日の日本株市場は日経平均が終値で755円上昇し、16,413.76円となった。NY最高値更新と113円台/ドルの円安から週明けの東京市場でも17,127円と年初来高値を更新した。
■今週末(11/7)には米雇用統計の発表が予定されているが堅調な雇用者増の継続が見込まれており米国株式市場の活況を受けて日本株も強含みで推移するものと考える。

 

<コンセンサス予想EPSは好決算を受けてプラス>
■IFIS/TIWコンセンサス225(日経225のコンセンサスEPS)は、全期間においてプラスであった。特に今期予想の変化が大きかった。前週比プラス企業数の比率もプラスに回復しており、2Q決算の好調が反映された形である。今回は妥当レンジを大幅に上方修正するが、テクニカルな面もあるが、予想EPSの増加、予想ROEの向上、長期金利の低下などが影響している。
■日銀の追加緩和によって来年10月実施の消費税率10%への引き上げが強まったとの見方も多い。コンセンサスEPSの動きを今後も慎重に見る必要があるが、依然として日経平均株価は妥当レンジの中位より下の水準にあり、割安感はまだ十分にある。確かに円安デメリットも含めて国内景気への影響は無視できないだけに輸出企業中心の展開が続きそうである。

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

16,150円~18,750円 (前回 15,300円~17,800円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(10月31日)来期予想ベースEPSをもとに算出

 

◇IFIS/TIWコンセンサス225(10月31日)

今期予想EPS 919.32 (前週 910.23円)
来期予想EPS 1013.28 (前週 1011.88円)
再来期予想EPS 1110.97 (前週 1106.90円)
今期予想PER 17.85 (前週 16.80倍)
来期予想PER 16.20 (前週 15.11倍)
再来期予想PER 14.77 (前週 13.81倍)
来期予想PBR 1.27 (前週 1.18倍)
来期予想ROE 7.83% 前週 7.84%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
6.89% (前週 7.00%)

*10月31日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

 

 

 図1

妥当レンジは(2009年以降で)過去最高水準であるが割安感残る。 

 

図2 

来期予想ベースのプラス企業比率は、68.7%→54.6%→44.8%→57.1%。再来期予想ベースは68.5%→58.8→48.9%→58.4%。50%超の水準(=プラス優勢)に戻る。 

 

 図3

予想ROEは緩やかな上昇傾向が続く。投資家の期待リターン(要求利回り)は再び低下しているがまだ過熱水準ではないと考える。 

 

図4

結果的にはまだ円安・株高のトレンドは継続。 

 

 

出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2012年1月から表示

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り
株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。