8月29日妥当レンジ 15,250円~17,700円
市場は切掛け待ちの状態。ECB理事会、雇用統計に注目
【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】
<米長期金利が低下する中でS&P500は最高値更新>
■先週は米長期金利(10年国債利回り)が、2.4%を割り込む中で、米株式市場はS&P500の最高値更新に見られるように好調に推移した。8月26日にはロシア軍が越境してウクライナに侵攻したとの報道があったものの、マーケットへの影響は軽微であった。しかし、104円台/ドルの為替水準が定着してきた日本株市場は、各種小売売上高指標が6月よりは改善したものの7月も前年同月比マイナスを続けたことや、鉱工業生産も回復が鈍いことなどから精彩を欠いた。
■今週は、雇用統計(5日)をはじめとした米国経済指標の発表が続く他、4日のECB理事会が注目される。8月のユーロ圏消費者物価指数は前年同月比0.3%と、7月の0.4%からさらに低下し、約5年振りの低水準となった。今後、ロシアへの制裁拡大によって欧州経済の停滞が予想される中でさらなる金融緩和の可能性が指摘されている(可能性は低いと見られるが)。
■国内では、3日に内閣改造が予定されており、新たな経済対策への期待が高まっている。
<コンセンサスEPSは2週続いて全期間プラス>
■IFIS/TIWコンセンサス225(日経225のコンセンサスEPS)は、2週連続で全期間(今期・来期・再来期ベース)においてプラスであった。前週比プラス企業比率もいずれの期間でも50%を超えており、国内景気後退が懸念される一方で電機・精密、自動車など輸出関連企業、建設関連企業において予想EPSがプラスとなる傾向が見られた(一方で非鉄、商社、小売などはやや弱含み)。
■日経平均株価は引き続き妥当レンジ下限に張り付いた水準にある。割安感が強いのはこれまでも繰り返し述べてきたところであるが、2部やJASDAQなど中小型株物色が続く中では相対的にも1部市場の割安感が高まっている。市場のボラティリティが低下していることが中小型物色に向かっている要因であるが、外人投資家の夏休みも終わり、市場の流動性が高まる中では大型株に妙味があると思われる。ただし、何らかの切掛けは必要かもしれないが。
◇日経平均妥当水準(レンジ)
15,250円~17,700円 | (前回 15,250円~17,700円) |
*「IFIS/TIWコンセンサス225」(8月29日)来期予想ベースEPSをもとに算出
◇IFIS/TIWコンセンサス225(8月29日)
今期予想EPS | 890.59円 | (前週 884.74円) |
来期予想EPS | 993.50円 | (前週 990.33円) |
再来期予想EPS | 1086.09円 | (前週 1082.46円) |
今期予想PER | 17.32倍 | (前週 17.56倍) |
来期予想PER | 15.53倍 | (前週 15.69倍) |
再来期予想PER | 14.20倍 | (前週 14.36倍) |
来期予想PBR | 1.21倍 | (前週 1.22倍) |
来期予想ROE | 7.81% | (前週 7.80%) |
来期予想 インプライド・リスク・プレミアム |
6.91% | (前週 6.86%) |
*8月29日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出
来期予想ベースのプラス企業比率は、52.6%→54.8%→56.6%と上昇。再来期予想ベースも43.5%→52.8%→58.0%と高水準。
日経平均/日経JASDAQ平均は、直近のピーク(昨年末)の8.04倍から6.73倍にまで低下。日経平均の割安感が強まっている(中小型は相対的に割高)。
日経VIも8月の相場下落前の水準に近づきつつある。狼少年のようであるが、今度は相場上昇の前兆か?
出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2012年1月から表示
「IFIS/TIWコンセンサス225」について IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。 理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。 4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。 〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕 会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。 〔予想EPS増減社数〕 今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。 〔予想PBR(今期末)〕 前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。 〔予想ROE(来期ベース)〕 前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。 〔リスクプレミアム〕 特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り |