8月8日妥当レンジ 14,700円~17,100円
一転、コンセンサスEPSがマイナスに!

2014/08/12

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

<想定外に大きく調整するも悪抜けか>
■先週は、ウクライナ情勢の緊迫化、米国のイラク空爆承認を受けて、NY市場の下落、米金利低下、円高などから日経平均株価は8日に14,753.84円の安値をつける暴落となった。その後は、ロシア軍ウクライナ国境付近からの撤収を受けて米国株が切り返したことなどから、週明けは15,000円台を回復している。
■8日の金融政策決定会合で日銀は輸出に対する見方を「弱めの動きになっている」と下方修正した。1Q決算発表が続く中でミクロの企業業績は比較的好調であるにもかかわらず、国内マクロ統計は6月の鉱工業生産指数が前月比3.4%下落したなど芳しい状態ではない。景気後退の可能性もあり、その場合は将来の企業業績に影響が出ることも考えられる。
■海外も米国が底堅い景気回復傾向を示している一方で、欧州や新興国では停滞が続いている。米国の利上げタイミングが近づくことによって、米国株が不安定な動きになりつつあり、日本株もそれに引きずられる展開も考えられる。 

 

<コンセンサスEPSは全期間でマイナスに>
■IFIS/TIWコンセンサス225(日経225のコンセンサスEPS)は、前週とは一転して全期間マイナスなった。住宅、化学、非鉄などの銘柄でマイナスが目立った。それ以上に前週比プラス企業比率(来期ベース)が前週の63.2%から43.9%と急落した点が気になるところ。今回は、妥当レンジを引き下げる。
■しかし、日本株は収益力からは割安感が強いという構造は変わっていない。押し目は引き続き積極的に拾ってゆきたいと考える。コンセンサスEPSが前週比プラスとなった銘柄の業種は、自動車、医薬品、電機・精密、不動産・建設など。国内景気停滞で影響がある個人消費関連よりも、輸出(あるいはグローバル企業)や公共投資関連企業に業績向上余地が存在すると思われる。 

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

14,700円~17,100円 (前回 15,150円~17,600円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(8月8日)来期予想ベースEPSをもとに算出

 

◇IFIS/TIWコンセンサス225(8月8日)

今期予想EPS 882.61 (前週 883.73円)
来期予想EPS 987.41 (前週 990.58円)
再来期予想EPS 1081.12 (前週 1082.85円)
今期予想PER 16.74 (前週 17.57倍)
来期予想PER 14.97 (前週 15.67倍)
再来期予想PER 13.67 (前週 14.34倍)
来期予想PBR 1.17 (前週 1.22倍)
来期予想ROE 7.79% 前週 7.81%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
6.96% (前週 6.96%)

*8月8日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

 

 

図1 
妥当レンジは下方に振れたが、株価は一時的に下限水準に。反転が期待される。 

 

図2

プラス企業比率は63.2%から43.9%に大きく下落。注意して観察する必要がある。

 

図3 

 株価下落で日経VIは上昇。

 

図4 

インプライド・リスク・プレミアムは6.96%まで上昇。割高感はないが、7%を超えてくるようだと、危機的な何かが生じている可能性を逆に意識したほうが良いかもしれない。 

 

出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2012年1月から表示

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り
株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
TIWマガジン「投資の眼」   株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。

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