7月4日妥当レンジ 14,950円~17,350円
企業業績見通しは中長期的にポジティブな兆し

2014/07/08

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

<米国の利上げ時期の模索からNY市場揺れる>
■3日発表の6月の米雇用統計は、非農業部門の雇用者数は前月比28万8,000人増と市場予想(21万人)を大きく上回った。失業率も前月比0.2ポイント改善して6.1%となり、米景気回復が本格化しつつあることを裏付ける形となった。しかし、一方でFRBの利上げ開始時期に関しては前倒しされるとの見方も強まることから、米国株式市場にとってはプラス・マイナス両面の影響が考えられる。
■NY株式市場は3日にダウが17,000ドルを突破し、史上最高値を更新した。NY株式市場はPERが22倍に達し、高値警戒感が強まりつつあり、景気回復と今後の利上げ時期を模索する不安定な展開が予想される。日本株市場は為替と米国株式との連動性が高いことから今後のNY市場の動きには注視が必要である。
 

<コンセンサスEPSは来期・再来期が上向く>
■IFIS/TIWコンセンサス225(日経225のコンセンサスEPS)は、前週比で今期ベースはマイナスとなったものの、来期・再来期ベースではプラスとなった。予想EPSのプラスに大きく影響したのは三菱商事(8058)であり、来期ベースで1.60円、再来期ベースでは4.87円と大きい。しかし、前週比プラスとなった企業比率は、来期で60.0%、再来期では68.3%と全体でも将来の見通しが大きく改善している。妥当レンジは表記の通り引き上げる。
■短期的にはNY株式市場の動きに影響を受けて、日本株も調整気味に推移することも考えられる。しかしながら、日本株の水準はまだ割安感が強いこと、将来の業績見通しに上向く傾向が現れてきていることから、押し目は積極的に拾ってゆく局面と考える。 

 

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

14,950円~17,350円 (前回 14,700円~17,100円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(7月4日)来期予想ベースEPSをもとに算出

 

◇IFIS/TIWコンセンサス225(7月4日)

今期予想EPS 880.73 (前週 881.72円)
来期予想EPS 981.44 (前週 979.87円)
再来期予想EPS 1079.41 (前週 1072.68円)
今期予想PER 17.53 (前週 17.12倍)
来期予想PER 15.73 (前週 15.41倍)
再来期予想PER 14.30 (前週 14.07倍)
来期予想PBR 1.22 (前週 1.20倍)
来期予想ROE 7.78% 前週 7.76%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
6.79% (前週 6.82%)

*7月4日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

 

 

図1 
妥当レンジは昨年末の水準を超えて上方シフトが続く。 

 

 

図2 

 プラス企業比率は前週の57.8%から60.0%に上昇。コンセンサスEPSも上向く。 

 

 

 図3

NT倍率は12.01まで低下。(為替次第の面もあるが)主力輸出企業には相対的割安感も 

 

 

図4 

日経VIの低下傾向は一段と強まる。7/4時点で15.60となり、2012年10月の17.15を下回った。大きな変化の可能性が示唆される。 

 

 

出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2012年1月から表示

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り
株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。