5月30日妥当レンジ 14,250円~16,550円
マーケット水準は依然として修正余地が大きい。

2014/06/02

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

<消費税の小売売上の反動減は織り込み済み>
■5月29日発表の商業販売統計において、4月の小売業の販売額は前年同月比4.4%減少した。3月が駆け込み需要から同11.0%増であった反動であるが、予想の範囲という見方が大勢である。4月の全国消費者物価指数はコア(生鮮食料品を除く)で前年同月比+3.2%、コアコア(食料及びエネルギーを除く)で+2.3%であった。消費増税の影響が1.7%と試算されており、物価の上昇基調が続いている。5月の東京都区部(中旬速報値)はコアで前年同月比2.8%、コアコアで同+1.9%であった。
■5月31日の日経新聞によれば、政府が6月に纏める「骨太の方針」(経済財政運営と改革の基本方針)にNISAの非課税枠拡大が盛り込まれる模様である。2016年度にも現行の年100万円枠を200万円に増額することと非課税期間の延長が検討されているとのこと。成長戦略としては、他には法人税率引き下げ、混合診療、女性活用などが盛り込まれる模様である。
■消費増税後の消費の反動減に関しては予測の範囲に留まっており、景気後退に対する危惧が後退しており、やや楽観的なムードが広がりつつある。NISAの非課税枠拡大によって再び配当利回り銘柄に注目が集まると考えられる。

 

<米長期金利は反転するか>
■今週は5日のECB理事会における追加金融緩和と、6日の米雇用統計が注目点となっている。ECBの緩和策が、政策金利の引き下げや不胎化の停止など市場予想の範囲に留まれば、材料出尽しから米国債への資金流入が弱まる(あるいは逆転する)という見方がある。米雇用統計において20万人を超える非農業部門雇用者数の増加が続けば、景気回復から米国株価の上昇が期待できる。
■いずれにしても引き続き、日本株式(日経平均)は妥当レンジの下限近くにあり、(ダウンサイド・リスクは小さく)上昇余地は大きいだけに積極的なスタンスで臨むべきと考える

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

14,250円~16,550円 (前回 14,000円~16,250円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(5月30日)来期予想ベースEPSをもとに算出

 

◇IFIS/TIWコンセンサス225(5月30日)

今期予想EPS 884.71 (前週 879.39円)
来期予想EPS 978.51 (前週 976.97円)
再来期予想EPS 1072.11 (前週 1070.50円)
今期予想PER 16.54 (前週 16.45倍)
来期予想PER 14.95 (前週 14.80倍)
再来期予想PER 13.65 (前週 13.51倍)
来期予想PBR 1.15 (前週 1.13倍)
来期予想ROE 7.68% 前週 7.63%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
6.81% (前週 6.78%)

*5月30日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

 

 

 図1
前々回のレポートに「ここが底」、前回のレポートに「まだまだ底値圏」と書いたが、まだまだ割安な水準。 

 

図2

プラスの変化は弱まわったが、50%をキープできていれば特に心配は無い。 

 

 

図3
 先週は新興市場が好調であったが、大型株の方に優位性が大きい。

 

図4 

インプライド・リスク・プレミアムには過熱感が無く、外部環境(海外)の安定を受けて株価上昇が続くと考える。 

 

出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2012年1月から表示

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り
株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。