4月11日妥当レンジ 13,500円~15,700円
売られ過ぎの水準だが、反転には米国指標頼み

2014/04/15

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

<株価下落は心理的な側面が強いが>
■日経平均株価は週末終値で前週比7.3%の大きな下落幅となった。幾つもの要因が(結果論としては)考えられるが、消費税率引上げ後の景気後退を懸念した日本株売り、円安ポジションの解消に、NY株式市場の下落、ECBの量的緩和の可能性、ウクライナ情勢の混迷化、などの要因が加わったものと考えている。
■特に、8日に発表された景気ウォッチャー調査での先行き指数が40.0→34.7に大幅悪化したこと、日銀政策決定会合後の記者会見(8日)で黒田総裁が強気の見通しを示したことによる追加緩和期待ガ大きく後退したこと、が影響した。

<売られ過ぎから自立反発は見込めるものの>
■投資家の期待(要求)リターンは東証1部で8.18%(今期ベース)[3ページ参照]とユーロ危機時の水準に達しており、行き過ぎの感が強い。したがって、自立反発に向うものと考える。しかしながら、足下、国内では具体的な支援材料が見当たらない。企業も新年度決算については慎重スタンスを保持すると予想され、消費税率引上げの影響が抜けるのは早くても6月(統計発表は7月)である。米国主要統計が発表が続く5月初旬頃までは、米国株と為替動向に追従した動きにならざるを得ないと考える。

<来期ベースのコンセンサス予想がやや弱含み状態>
■4月11日時点の「IFIS/TIWコンセンサス225」は、前週比で今期は若干マイナス、来期・再来期は若干プラスとなった。既に幾つかの2月決算企業で対象決算期のシフトが生じているにもかかわらず、予想EPSのプラス変化は限定的である。従前のアナリスト予想よりも実際の企業見通しが慎重であることが影響しているものと考えられる。
■TIWでは様々なポイントからマーケットの適正水準について考察しているが、多くの指標で株価の割安感が顕著になってきている。中期的な拾い場にあることを強く主張したい。

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

13,500円~15,700円 (前回 14,100円~16,350円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(4月11日)来期予想ベースEPSをもとに算出

 

◇IFIS/TIWコンセンサス225(4月11日)

今期予想EPS 764.38 (前週 766.83円)
来期予想EPS 891.99 (前週 891.91円)
再来期予想EPS 990.25 (前週 988.34円)
今期予想PER 18.26 (前週 19.64倍)
来期予想PER 15.65 (前週 16.89倍)
再来期予想PER 14.10 (前週 15.24倍)
来期予想PBR 1.22 (前週 1.31倍)
来期予想ROE 7.79% 前週 7.73%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
6.77% (前週 6.55%)

*4月11日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

 

 

 

 

 

 

 
 

 図1

 妥当レンジも下方シフトしたが、株価はほぼ下限にあり割安感が強い水準にある。 

 

図2

12ヵ月移動平均の妥当レンジ(下限)を日経平均は大きく下に抜けた。買いシグナルと言っても良さそうだ。 

 

図3

 東証1部の期待リターン(今期ベース)は、直近8.18%とユーロ危機時の水準にまで上昇している(=投資家のリクク回避姿勢が強い=割安)。 

 

 図4

日経平均EPSはコンセンサス、TOPIXは日経新聞から算出(いずれも今期予想ベース)、2012年年初を100として指数化した。
ここ最近はTOPIXの方がEPSの拡大が顕著で有るにもかかわらず、NT倍率は12.3倍と高い水準にある(NT倍率は今後低下する方向に向かうと考える)。

 

出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2012年1月から表示

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り
株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。