どうなる完成車メーカーの14年度業績 -高田 悟-

2014/04/04

14/3期が終わった。14/3期は日産を除き各社から期を追うごとに計画上方修正がなされた。通常、中間決算発表時以外は計画修正をしないスズキまでもが、2月の3Q累計(4-12月)決算公表時に営業利益予想を上方修正するなど各社業績好調が続いた。トヨタはリーマンショック前の水準の利益を取り戻し着地したと想定され、各社ほぼ、少なくても直前の予想をクリアし多くが営業過去最高益を更新して着地したと見られる。

さて、15/3期が気になるが、15/3期展望に当り、前期14/3期を振り返る。前期好調の背景は1米ドル80円から100円へ20円、円安が進み各社円安メリットを存分に享受した。リーマンショック後の円高と販売減の中で固定費を削減し、損益分益点引き下げを進めた。身軽になった中で生産台数急増により限界利益の増を各社十分享受できた。などによる。なお、生産増には主戦場の北米やタイを除く東南アジア市場が好調であったことに加え、国内販売が後半、消費税増税前の駆け込み需要で上向いた、などが寄与した。

わかりやすくするため単純化して話を進める。前々期(13/3期)100の営業利益が前期(14/3期)は185になった。前々期から85の増益を要因別に分解すると、①為替で+67、②数量増・売上構成で+10、③原価改善で+18、④費用の増で▲10となる。これを等価式で表すと「85の増益=①67+②10+③18-④10」となる。つまり、大幅な円安効果、数量増及び売上内容の改善、そして製造原価の改善などの増益要因で生産急増や将来への先行費用増増加に伴う諸費用の増などの減益要因を吸収した。

この増益構造を平均とすると最大手のトヨタが当然平均になる。そして、①及び②の効果が相対的に大きかったマツダ、三菱、富士重工業が平均を上回る増益率となった。新興国を中心とした成長投資加速から相対的に④が大きかった日産やホンダが平均を下回る増益率となった。地域や製品構成の良さからリーマンショックの影響が低かったスズキやダイハツ工業が同様に平均を下回る増益率になる。などが14/3期着地予想から窺われる各社の前期状況である。

今期、15/3期に目を転じる。今期はすでに1米ドル100円を超え円安が進行している。①の為替影響に大きな期待は持てない。むしろ、減益要因となるリスクもある。④の費用は海外での供給力増、新興国ニーズへ対応した車作り、環境対応、そして国内外での労務費の増などにより前期から減ることはなく膨らむ公算が各社大きい。とすると③の原価改善は急に増える訳ではない地道な活動なので、②の数量・売上構成でいかに稼ぐかがポイントになる。そして②には地域ミックスやモデルサイクルが重要になる。

ところが、②関し数量は前期に比べ環境が悪い。日本は登録車も軽自動車も消費税増税の影響を受ける。強みを持つ、中国を除くアジアは米国金融緩和の終焉、中国景気悪化などによるマクロ環悪化から大きな期待が持てない。一方で、景気回復、自動車販売堅調が続く米国及び前期前半で尖閣問題による日系車不買問題が終息した中国が景気減速の一方で自動車販売は好調持続から販売増に期待が持てる。2大市場堅調が救いと言えよう。

こうした中で、米国、中国(最終段階利益に影響)2大市場の比重が高い、両市場で強いモデルを持ち販売費を多く使わず台数を伸ばせる先の業績が相対的に良くなると考える。以上を踏まえると国内、アジア中心のスズキ、ダイハツ工業は厳しい。日産は台数増が見込めるが、前期上期決算公表時の下方修正要因ともなった販売費増をいかに抑制しつつ数量を伸ばすかがポイント。ホンダは北米比重が高い点に期待が持てるが主力モデルのエイジングが進んでいること、主力の乗用車はライトトラックに比べ需要が弱く競争が激化していることが懸念される。

とすると、SUV系の需要が強い2大市場においてSUV系車種で強いモデルを持つマツダと富士重工業への期待が一段と高まる。とくにマツダは新技術搭載により新型車の台当りの収益力が従来から格段に高まっていることが注目される。

15/3期は①為替の影響が薄まり、市場環境も前期から悪化、④の費用は減らない、前期後半に国内好調などから業績を当初想定以上に伸ばした、などから増益のハードルはかなり高くなっていると言える。自動車株は全般に株価指標面には割安感は強いがこのことが最近の株価伸び悩みの一因になっていると考える。新興国中心に自動車需要はまだまだ伸びる。自動車は成長セクターであることには異論はないが、今期は従来以上に銘柄選別が重要になっていると言えそうだ。

株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
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