11月29日妥当レンジ 14,550円~16,900円
今週は、米経済指標に注目。一段の円安も

2013/12/03

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

<10月の消費者物価指数(コアコア)はプラスに>
■29日に発表された10月の消費者物価指数はコアコア(食料及びエネルギーを除く総合)は前年比で9月の0.0%から+0.3%とプラスに転じた。東京都区部11月(中旬速報)でも+0.2%とプラスに転じている。
■しかしながら、消費税率引上げ後に再びデフレに陥る可能性が指摘されていることに加えて、輸入物価はエネルギー価格に限らず上昇していることを考えると、物価上昇よりも賃金上昇が本来的に目標とすべき指標であるとの見解もある。
■ただし、マーケットは消費者物価上昇を視野に、インフレ期待による株価の下支えが当面は続くものと考える。

<今週は米国経済指標を視野に底堅い展開>
■2日発表の11月のISM製造業指数は57.3(10月56.4)と上昇し、2年半ぶりの高水準となった。ドル円は103円台に突入する円安となっている(日本時間5:00現在)。今週は、ISM非製造業指数(4日)、ADP雇用統計(4日)、雇用統計(6日)と米経済指標の発表が続く。米景気回復を梃子に円安・株高の構造が続きそうである。

<コンセンサスEPSは全期間で小幅のプラス継続>
■11月29日時点の「IFIS/TIWコンセンサス225」は、小幅ながら前週比で3期間(今期・来期・再来期)で増加した。今回も、EPSの増加等から妥当レンジを上方に修正する。
■29日時点の期待リターン(来期ベース)は7.09%となり、本年1月の7.11%を下回った。ただし、インプライド・リスク・プレミアム(来期ベース)では金利低下の影響からまだ6.49%の水準にあり、過熱感は無い。また、米経済の回復と円安進行による企業業績拡大の継続を前提とするならば、ターンアラウンド(大転換)を迎えつつあるという見方も出来る。いずれにしても、来年度が視野に入りつつあるタイミングでもあり、過度に慎重になる必要はないと思われる。
 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

14,550円~16,900円 (前回 14,300円~16,600円)

  *「IFIS/TIWコンセンサス225」(11月29日)来期予想ベースEPSをもとに算出

 

◇IFIS/TIWコンセンサス225(11月29日)

今期予想EPS 780.02 (前週779.47円)
来期予想EPS 878.10 (前週875.64円)
再来期予想EPS 981.71 (前週979.49円)
今期予想PER 20.08 (前週 19.73倍)
来期予想PER 17.84 (前週 17.57倍)
再来期予想PER 15.95 (前週 15.70倍)
来期予想PBR 1.38 (前週1.36倍)
来期予想ROE 7.73% 前週7.74%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
 
6.49% (前週6.50%)

*11月29日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

 

 

 妥当レンジの下限付近から一気に中位よりうえの水準に。

    

           

 期待リターンは一段と低下して7.09%に。ただし、インプライド・リスク・プレミアムで見た場合は、まだ5月時点(6.44%)よりも高い位置(6.49%)にある。徐々に翌年度にへの移行を迎えることを考えると割高とは一概には言えない。

     

  

円安進行によっては一段高も 

    

  

  

 NT倍率が急上昇。    

                

 出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2012年1月から表示

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り

 
株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。