11月8日妥当レンジ 13,700円~15,900円
米雇用統計を機に反発したが・・・
【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】
<米雇用統計発表からNY株高、円安で11日は反発したが>
■8日に発表された10月の米雇用統計において、非農業部門雇用者数(前月比増加数)は20万4,000人増と市場予想(12万人増)を大きく上回った。9月も速報値の14万8,000人増から16万3,000人増へ上方修正された。それを受けてNY株式市場が過去最高値を更新するとともに、ドル円も99円台と円安が進んだ。11日の東京市場も日経平均が一時14,300円台を回復する上昇となった。
■米景気回復によってテーパリング(緩和縮小)が早まる可能性も考えられ、単純に米景気回復を期待した株高が継続するとは考え難い。また、7日のECB理事会で政策金利の引き下げと2015年までの資金供給が決定されたことからユーロ安(ドル高・円高)が見込まれる。
■国内企業の2Q決算発表は終盤となるが、事前の期待を下回る結果に終わりそうである。現在、日本株がバリュエーション上で安くなっている理由の一つが長期金利がかつてない水準にまで引き下げられている点にある。金利上昇が引き起こされればマーケットに強い影響を与える可能性には留意したい。
<2Q決算における予想EPSの上昇期待は不発に>
■11月8日時点の「IFIS/TIWコンセンサス225」は、前週比で3期間(今期・来期・再来期)ともに小幅ながら2週連続マイナスとなった。先週に引き続き、前週比のプラス企業数・マイナス企業数ではほぼ半々であった。今回も、妥当レンジを微調整する。
■6日に東京証券取引所から新指数である「JPX日経インデックス400」の銘柄が発表となった。ROE基準を採用し、ガバナンスやディスクロージャーにも配慮していることから、企業のROE重視の姿勢やIRの向上に繋がることが期待できる。市場の配当性向の向上に期待したい。
◇日経平均妥当水準(レンジ)
13,700円~15,900円 | (前回 13,800円~16,000円) |
*「IFIS/TIWコンセンサス225」(11月8日)来期予想ベースEPSをもとに算出
◇IFIS/TIWコンセンサス225(11月8日)
今期予想EPS | 775.00円 | (前週775.82円) |
来期予想EPS | 868.94円 | (前週870.03円) |
再来期予想EPS | 971.40円 | (前週972.03円) |
今期予想PER | 18.18倍 | (前週 18.31倍) |
来期予想PER | 16.21倍 | (前週 16.32倍) |
再来期予想PER | 14.50倍 | (前週 14.61倍) |
来期予想PBR | 1.29倍 | (前週1.29倍) |
来期予想ROE | 7.91% | (前週7.91%) |
来期予想 インプライド・リスク・プレミアム |
6.78% | (前週6.78%) |
*11月8日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出
引き続き日経平均は妥当レンジの下限付近にあるものの、現在の妥当レンジは長期金利(10年国債利回り)の低下が影響している(=金利が上昇すれば妥当レンジは下降する)。
予想ROEは緩やかに低下傾向
株価は長期金利の低下が支えている?
依然として50%を若干上回るレベルで推移。
出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2012年1月から表示
「IFIS/TIWコンセンサス225」について IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。 理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。 4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。 〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕 会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。 〔予想EPS増減社数〕 今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。 〔予想PBR(今期末)〕 前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。 〔予想ROE(来期ベース)〕 前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。 〔リスクプレミアム〕 特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り |