7月5日妥当レンジ 13,600円~15,700円
コンセンサスEPSは1Q決算後も小動きの見通し

2013/07/09

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

<米国経済指標の好調を受け、堅調に推移したが>
■先週は比較的好調な米国経済指標を受けて、為替が円安方向で推移したこともあり、日経平均は、週末終値で前週比632円上昇し、14,300円を回復した。ポルトガルの長期金利の急上昇、エジプトのクーデターなどの波乱要素があったものの、中国シャドーバンキングに対する懸念がやや後退したことや、ECB(欧州中央銀行)が利下げの可能性を示唆したことなどから安心感が広がった。
■国内では7月21日に参議院選挙が予定されている。与党(自民・公明)が圧勝することによって、参議院のねじれ解消が期待される。参議院選挙はほぼマーケットに織り込み済みと思われ、選挙結果が大きな影響を与える可能性は低いと思われる。
■中国のシャドーバンキング問題は、6月20日に13.0%まで跳ね上がった上海銀行間金利が、先週末(28日)には4.9%にまで下がったことによって鎮静化している。29日にシャドーバンキングの内、高利回りで資金を集めている理財商品の規模について中国当局関係者が8兆2,000億元(約132兆円)と公表したことも市場に安心感を与えている(日本のGDPとほぼ同額の465兆円との報告書がMoody’sから出されている)。中国当局の公表により、パニックはひとまず回避されたと考えられる。
■選挙後は1Q決算発表が本格化する。足下のコンセンサスEPSの動きを見ている限り、今期見通しが上方シフトする可能性はあまり高くないだろう。現在の日経平均株価は、妥当レンジの中位水準にあり、レンジ内のボックス圏での動きを予想する。

<今回も全期間でマイナス企業数がプラス企業数を上回った>
■7月5日時点の「IFIS/TIWコンセンサス225」は、来期ベースは若干プラスであったものの、今期、再来期は僅かながらマイナスであった。前回に続いていずれの期間においても、前週比でプラスとなった企業数は、マイナスとなった企業数を下回った。為替が円安で推移していることから、輸出企業の採算改善が期待できるものの、1Q決算段階では会社側予想値の修正は見込み難い。アナリスト予想の見直しは、小幅にとどまる可能性が指摘できる。
■日経平均の妥当レンジは、基準となるBPS値の変動による予想ROEの上昇から、上方に修正する。

(来週は都合によりお休みを致します)
 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

13,600円~15,700円 (前回 13,100円~15,100円)

  *「IFIS/TIWコンセンサス225」(7月5日)来期予想ベースEPSをもとに算出

 

◇IFIS/TIWコンセンサス225(7月5日)

今期予想EPS 801.32 (前週802.19円)
来期予想EPS 888.52 (前週887.96円)
再来期予想EPS 978.95 (前週979.99円)
今期予想PER 17.86 (前週 17.05倍)
来期予想PER 16.11 (前週 15.40倍)
再来期予想PER 14.62 (前週 13.96倍)
来期予想PBR 1.30 (前週1.23倍)
来期予想ROE 8.05% 前週7.99%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
 
6.64% (前週6.69%)

*7月5日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

 

 

妥当レンジも回復傾向にあるが、株価はレンジの中位水準まで急回復。

                  

 


 1Q決算で予想EPSの上方シフト(=予想ROEの改善)が生じない限りは、本格的な上昇軌道は見込みにくいと考える。  

  

 

 

前週比EPSがプラスとなった企業数は、マイナスとなった企業数を前週に引き続いて下回った。1Q決算での予想EPSの上方シフトは見込み難い。

 

               

  

JASDAQ市場のリスクプレミアムはやや上昇傾向(割高感が薄らぐ)。7月16日に(取引所統合による)重複上場銘柄が無くなることによってプレミアムは上昇する可能性が考えられる。 

        

         出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成 
     いずれも2012年1月から表示

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り

    
 
株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。