3月29日妥当レンジ 11,800円~13,700円
4月はやや膠着する可能性も、調整後は上昇基調へ

2013/04/02

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

<不安要因はユーロと、日銀政策決定会合と、企業業況判断>
■キプロス問題は決着を見たにも関わらずユーロドルの重い展開が続いている。2月上旬の36ドル台から28ドルを割り込んだ。キプロスの資本移動規制が前例となり、問題国からの資金流出が引き起こされる可能性を懸念していることと、イタリアが内閣を組成できずに再選挙に陥る可能性が重石になっている。
■1日の日本株市場は、大幅に下落した。欧州情勢で不気味さが漂っていることと、発表された日銀短観の業況判断において中小企業製造業の業況判断指数が5四半期連続で悪化していることが嫌気された。3日~4日の金融政策決定会合では既に政策の方向性が新聞等で報じられており、サプライズがない限り材料出尽くしになる可能性もある。
■1-3月のマーケットの上昇率が高かったこともあり、調整局面は必要である。13年度の企業業績見通しが慎重なものになる可能性も指摘されており4月はやや膠着した展開も考えられる。

<対象決算期移行のインパクトを考慮すれば割安感強い>
■3月29日時点の「IFIS/TIWコンセンサス225」は、全期間においてプラスであった。日本製紙G(3863)が持株会社解消のために一時的に除外された影響は極めて軽微であった。プラス企業では東洋製罐GHD(5901)がやや目立っていた。今週は予想ROEの低下(ベースとなるBPSの上昇)から日経平均の妥当レンジは微調整(引き下げ)する。
■前回も申し上げたが、再来期予想ベースで算出した妥当レンジは12,750円~14,850円である。仮に13年度の期初の会社予想がコンセンサスを下回っても12ヵ月移動平均の予想EPSは着実に上昇すると予想されることから、株価の下落は一時的な調整過程と考える。引き続き、株価の押し目は好機と捉えたい。

◇日経平均妥当水準(レンジ)

11,800円~13,700円 (前回 11,900円~13,800円)

  *「IFIS/TIWコンセンサス225」(3月29日)来期予想ベースEPSをもとに算出

 

◇IFIS/TIWコンセンサス225(3月29日)

今期予想EPS 562.34 (前週560.80円)
来期予想EPS 757.39 (前週757.74円)
再来期予想EPS 849.77 (前週848.19円)
今期予想PER 22.05 (前週 22.00倍)
来期予想PER 16.37 (前週 16.28倍)
再来期予想PER 14.59 (前週 14.55倍)
来期予想PBR 1.26 (前週1.27倍)
来期予想ROE 7.70% 前週7.80%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
 
6.66% (前週6.75%)

*3月29日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

 

 

踊り場が3週間くらい見込まれるが、対象決算期変更から5月からレンジの上方シフトが予想される。

     

  
 予想ROEは分母(純資産)の増加の影響から低下トレンドに。これが妥当レンジを足下で引き下げている。

  

  

日経平均と日経JASDAQ平均の(インプライド)リスクプレミアムの差は依然として2%存在する=小型株は相対的に割安。

 

  

  しかし、東証1部とJASDAQの時価総額倍率は年初の32倍だから27倍台まで急速に縮まっており、利食い売りが出易い状態。

  

         出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成 
     いずれも2012年1月から表示

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り

    
 
株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。