3月8日妥当レンジ 11,650円~13,500円
まだ割高ではない

2013/03/12

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

<米経済指標好調から円安加速>
■先週5日にNYダウが史上最高値を更新したことを受けて、世界的に株高が続いている。また、6日発表のADP雇用統計、8日発表の米雇用統計が市場予想を大きく上回ったことから、ドル円は96円台と急速に円安が進んでいる。
■米国では金融緩和の出口戦略についての議論が早くも語られる中で、日本においては緩和拡大の施策が議論されている。米10年国債利回りが2%台を回復する中で、日本国債は0.6%台と金利差も拡大しており、円安基調は暫く続くものと思われる。
■今週はイタリア議会が15日に招集されることから再び欧州の不均衡な状況に投資家の目が向く可能性が考えられる。また、北朝鮮が南北間の不可侵条約や非核化条約を破棄(8日)したこと、中国各地での暴動などにはリスク要因として注視しておく必要があるだろう。

<上昇ピッチは速いが、まだ割高水準にはない>
■3月8日時点の「IFIS/TIWコンセンサス225」においては、来期・再来期のコンセンサス予想EPSは引き続きプラス傾向にある。前週比プラスとなった企業数の比率も高い水準を維持しており、小幅ながらプラスのトレンドはまだ続きそうである。日経平均の妥当レンジを今週も引き上げる。
■2週前(2/26付)のレポートにおいて、「再来期の業績を基準とした場合の妥当レンジは11,950円~13,850円であることから、下限となる12,000円位までは高値に対して過度な警戒スタンスを採らずに、強気で臨みたい。」と述べた(その時点での日経平均は11,385.94円)。再来期ベースの妥当レンジも12,600円~14,650円へと上方にシフトしていることを鑑みれば、現在の水準(12,283.62円)には、市場の期待リターンの水準からみて割高感はない。マーケットの上昇スピードが速いことから悪材料に揺さぶられる可能性もあるが、基本は強気のスタンスで臨みたい。

◇日経平均妥当水準(レンジ)

11,650円~13,500円 (前回 11,300円~13,050円)

  *「IFIS/TIWコンセンサス225」(3月8日)来期予想ベースEPSをもとに算出

 

◇IFIS/TIWコンセンサス225(3月8日)

今期予想EPS 563.01 (前週565.43円)
来期予想EPS 756.36 (前週753.34円)
再来期予想EPS 845.87 (前週844.26円)
今期予想PER 21.82 (前週 20.53倍)
来期予想PER 16.24 (前週 15.41倍)
再来期予想PER 14.52 (前週 13.75倍)
来期予想PBR 1.26 (前週1.21倍)
来期予想ROE 7.76% 前週7.86%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
 
6.63% (前週6.80%)

*3月8日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

 

 

PER水準からすると来期予想PERは前年の同時期を大きく上回っており、割高に見える。

  

  
 移動平均EPS(向こう12カ月)では、前年同期水準を上回ってさらに増加する様子が伺える(2012年4~5月は決算期変更に伴うイレギュラーな値)

 

 
コンセンサス予想(来期ベース)では前週比プラスに修正される企業比率が高い水準をキープしている。

 

  

妥当レンジは引き続き上方シフトが続いている。 

      出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成 
     いずれも2012年1月から表示

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り

    
 
株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。